2020年11月
目次
外国人身分証明書の発行は、地元を管轄する警察署
タイ永住権の審査に合格し、入管で永住権を証する冊子「居住証明書」Certificate of Residence の受領を済ませて晴れて永住者となったら、次に警察署から「外国人身分証明書」Certificate of Alien ใบสำคัญประจำตัวคนต่างด้าว の発行を受けねばならない。
「外国人身分証明書」は、タイに住む外国人でも永住外国人だけが所持する冊子だ。
非永住外国人には申請も取得もできない。
なのでタイに長く住む外国人でも、永住権保持者以外には実物を見たことがある人は稀で、そんな冊子があること自体を知らないことが多い。
かなり有名無実だが制度上、永住者には外国人身分証明書の常時携帯義務があるとされている(タイ外国人登録法第17条)。
タイ語では、正式名を「バイサムカン・プラチャムトゥア・コンターンダーオ」 ใบสำคัญประจำตัวคนต่างด้าว という。
略して、「バイ・ターンダーオ」 ใบต่างด้าว とも言う。
発行は、永住者の居住地を管轄する地元警察署だ。
この「居住地」とは、「住居登録証(タビアンバーン)に登録しようとする住所」を指す。
何らかの事情で、実際の居住地と住居登録証(タビアンバーン)上の住所が異なる場合には、住居登録証上の住所を管轄する警察署で手続きすることになる。
またそのため、「住居登録証」(タビアンバーン)と「外国人身分証明書」の住所記載は、常に互いが一致していなければならない。
「外国人身分証明書」の発行と受領は、入管から永住権を証する「居住証明書」Certificate of Residence を受領したら、7日以内に済ませなくてはならない。
実際には、過ぎてしまった場合でも受領は出来るが、罰金(500バーツ)となる。

入管が警察署に宛てた「発行依頼レター」を発出
タイ永住権審査に合格して入管で永住権(居住証明書)を受領する際には、あらかじめ居住地を管轄する警察署名を調べて置いて、入管にその警察署名を通知せねばならない。
すると入管からは、その警察署の署長に宛てた「外国人身分証明書の発給依頼レター」が手渡される。
このレターが重要で、警察署が外国人身分証明書を発給する根拠となる。
入管から警察署長に宛てて「この人物に永住権発給が認められた。ついては外国人身分証明書を発行してくれ」という依頼が書かれている。
永住者は、このレターを自分で持って警察署に行って、「外国人身分証明書」の発給を申請する。
だから、レターは決してなくしてはならない。
レターの全文はここ
レターの全文が見たい人には、私のレターをここに上げて置く。
(タイ語のみ。PDF )
参 照:外国人身分証明書の発給依頼レター
発行はレターを持って警察署へ
外国人身分証明書は、入管で永住権(居住証明書)を受領してから7日以内に警察署に行って申請する。
提出書類は、以下の通りだ。
・入管が発行した「外国人身分証明書発給依頼レター」
・永住権を証する「居住証明書」Certificate of Residence
・パスポート
・顔写真
発行手数料は以下の通り。
・新規発行手数料 200バーツ
・1年有効の手数料 200バーツ
・合 計 400バーツ
※5年有効の手数料は800バーツ
通常は即日交付される。
但し、外国人身分証明書の新規発給を受けようとする永住外国人はめったに現れないため、いきなり警察署に行っても、担当者がいないとか、やり方が分からない、冊子のストックが切れている、と言った理由で対応できないことがある。特に、永住外国人などほとんど誰もいないような地域だと、十中八九こうなる。
そのため、永住権発給が決定した時点で警察署にも連絡を取って担当者と事前にやり取りをし、警察署側にも準備をして置いてもらった方がスムーズだ。
警察署から入管へ発行通知
警察署は、外国人身分証明書を発行すると、冊子の全ページコピーを入管に送付し、発行した事実を入管に報告する。
なので、外国人身分証明書の新規発行は、入管でも把握できる仕組みになっている。
永住者本人は何もする必要はなく、外国人身分証明書を受領しても自分で入管に通知する必要はない。
「永住外国人台帳」へ登録
警察署には「永住外国人台帳」というのがあって、管轄地区に居住する永住外国人全員をリストアップしている。
外国人身分証明書の発行を受けると、この台帳に、住所や氏名が記載される。
「外国人身分証明書」の冊子はもらった時から古い
冊子は新規発給でも初めから非常に古い。
製本された年次が相当に古いと思われる。
冊子はタイ語のみ。記入項目はすべて手書き
タイ語のみで書かれていて、英語併記はない。
但し、最終ページの注意書きだけがなぜか、タイ語・英語・中国語だ。
発行は完全に手書きで、冊子に書き込まれる全項目が発行した職員の手書きだ。
外国人身分証明書は延長が必要
外国人身分証明書は、住所を管轄する警察署で、定期的に延長が必要だ。
延長は1年と5年
延長には、1年(1種)と5年(2種)がある。
外国人登録法の規定では、1年と5年は、どちらにするかを永住者が選べるとされている。
しかし実際の運用では、警察署に備え付けのマニュアルには、初年は1種扱いとして1年とし、翌年の延長以降を2種扱いで5年とする、とされている。
(マニュアルは私も実際に見た)
私の場合は、担当者がこのマニュアル通りに発行したので、初年は1年となった。
なので翌年に延長すれば、そこからは5年毎でいいという。
しかし、警察署と担当者によっては、初年から5年で発行したり1年+5年として6年で発行しているケースもあるようだ。
20年は同じ冊子を使い続ける?
延長はあるものの初年を除けは、頻度が5年に1回。すなわち、10年に2回。
延長記録の記入を重ねても、ページ余白がなくなることはまずあり得ないように見える。
ただ、5年毎に新しい写真を張り付けることになっている。
追加の写真貼付欄が、3つしかない。
だから、初回を含めて合計20年間分しか写真が貼れないことになる。
写真欄が一杯になってしまってからの延長はどうしたらよいのか、冊子の再発行となるのかは、まだ私には不明だ。
とにかく、少なくとも20年間は、同じ冊子を使い続けなければならないようだ。
延長が遅れてもすぐさま無効にはならない
外国人身分証明書は、延長手続きが期日に間に合わずに遅れてしまっても、すぐさま無効にはならない。
遅れた場合には500バーツ/年の罰金となり、書かされる書類が増えるが、それでも延長は出来る。
延長が1年以上遅れた場合の手続き方法すら、定められている。
正しく延長されてないとタイ出入国ができない!
なお、外国人身分証明書が正しく延長されていないままだと、タイ出入国が出来なくなってしまう。
永住者のタイ出入国には事前に市中の入管で、永住権を証する冊子「居住証明書」Certificate of Residanceに、永住者の再入国許可の役割を果たす「裏書き」Endorsement スタンプを、パスポートにはノンクォーター・イミグラントビザを、それぞれ取得せねばならない。
「裏書き」の申請には、有効な外国人身分証明書の提出も必要だ。
「裏書き」の申請書には、外国人身分証明書の番号と延長期限の記入が求められる。
外国人身分証明書が正しく延長されていないままだと、この「裏書き」が発行されない。
「裏書き」が取得できないままでは、永住者はタイを出入国できない。
なので、出入国の予定があるなら、外国人身分証明書の延長がされてないままなら早急に延長手続きが必要だ。
転居する場合には警察署で手続きが必要
永住者が転居により、発行した警察署の管轄区域を去ることになった場合には、転居前に警察署に出向いて外国人身分証明書と永住者管理台帳の住所抹消手続きをしなければならない。
その上で30日以内に、新住所の警察署で新たな住所登録を行う。
なお、転居の際には上記に合わせて、住居登録証(タビアンバーン)の方の住所変更もせねばならず、郡役所等で手続きが必要だ。
タビアンバーンの住所と外国人身分証明書の住所は、こうして常に一致するようにしておかねばならない。
私の外国人身分証明書取得(体験談)
私の外国人身分証明書の取得だが、一筋縄ではいかずに、結構な手間を要した。
参考までに、以下に体験をまとめておく。
田舎で新規永住者はめったに現れない
私の居住地はチェンマイでも、県庁所在地郡ではなく隣接した郡で、少々田舎だ。
警察署に聞いたところ、郡内の永住外国人数は約20人ちょっとだとのことだ。
この程度の人数規模だと、警察署が外国人身分証明書の手続きを取り扱うことは、めったにない。
特に、延長や転出・転入ではなく新規発給となれば、その署の管轄地区に、新たに永住権取得者が出たということだ。
これは、田舎では十数年に1度か、もしかしたらそれ以上に稀なケースである。
警察担当者には、事前に電話して置いたのに・・・
案の定、担当の警察官は手続きを理解していなかった。
私の永住権発給が確定して、バンコク入管での永住権受領日が確定した段階で、妻から警察署の担当者に電話を入れて、近いうちに外国人身分証明書の新規発給に行くことになる旨を伝え、準備して置いてもらうことにした。
担当の警察官は愛想よく、「わかった、わかった、準備しておくから日取りが決まったら教えてくれ」とのことだった。
しかし、妻と共に実際に手続きに行ってみると、「新規発給だ」と伝えておいたにもかかわらず、すっかり「転入手続き」と混同していた。
そして、新規発給の根拠となるはずの、バンコク入管が発行した「外国人身分証明書の新規発給依頼レター」を提示しても、ろくに目もくれず、
「手続きには住居登録証(タビアンバーン)が要るんだ」
「ないならまず郡役所で住居登録証(タビアンバーン)を作って持って来てくれ」
という。
これはひどい誤解で、新規永住者の手続きは順番上、まず警察署で外国人身分証明書を取得してから、郡役所で住居登録証(タビアンバーン)に氏名を登録することになっている。
逆にすることなどできない。
住居登録証(タビアンバーン)の住所記載を変更してから警察署に届けるという手続きは、永住者が転出・転入する場合だ。
これとすっかり混同している。
しかし、イチから説明しようにも、担当の警察官がこちらの話には聞く耳を持たず、タイ人によくありがちな「独演モード」に入り、
「とにかく住居登録証(タビアンバーン)が要る」
「ないなら何もできないよ」
と、あまりに言い張って、埒が明かない。
仕方がないので、一旦打ち切って引き上げることにした。
出直して説明したらようやく理解してくれたが、冊子はストック切れ
その間、ちょうど警察署に隣接して郡役所があるので、郡役所で住居登録証(タビアンバーン)への新規登録に関する相談をする。
(郡役所も郡役所で手続きを全く知らず、かなりもめた)
この相談が終わったら警察署に取って返し、先ほどの警察官に再度会いに行った。
「郡役所でも住居登録証(タビアンバーン)より先に、まず外国人身分証明書を取得しろと言ってましたよ」
(ホントはそんな話はしてこなかったが、制度的にはこれで正しい)
と伝え、改めて、今回が永住外国人の転入ではなくて、永住が新規に認められたので外国人身分証明書を新規取得する必要があるから来ているということを、ゆっくりと説明した。
ここでようやく、訪問趣旨が正しく理解された。
この警察官は、この署で外国人身分証明書の担当をずっとやって来て、もう来年で定年なのだそうだ。
しかし、外国人身分証明書の延長手続きや転入・転出手続きは取り扱ったことがあっても、新規永住者に対する冊子の新規発行は一度もやったことがないという。
手順がよくわからないからと、棚からもうボロボロになった取り扱いマニュアルを引っ張り出して確認したら、了解できたようだ。
ただ、
「外国人身分証明書の冊子のストックが署にないので、チェンマイ入管に取りに行かなければならない」
「だから今日の発給は出来ない」
という。
「入管に取りに行って冊子が手に入ったら電話するから、その時に再度署に来てもらう日を打ち合わせよう」
ということになった。
今日は無駄足になったような感じだが、発給が確定出来たので良しとして、帰宅した。
3回目の警察行きで、ようやく発行!
そうしたら午後になって妻の携帯まで連絡があり、
「もう冊子が手に入った。明日でもいいが今日の16時以降に署に来られるなら、今日の発給もできるよ」
という。
善は急げと、16時に警察署に取って返した。
外国人身分証明書の冊子は非常に古い。
新規発行には、記載事項を何ページもすべて手書きせねばならない。
こちらはただ待つだけで楽だが、担当の警察官は記入に結構な時間を要していた。
ショック! 私の手元に渡る前に冊子が損傷!
担当者が手書きで全項目の記入が済んだら、
「外国人身分証明書を新規発行したことを、警察署から入管に通知しなければならない」
「入管には、写しを取って警察署から送るから」
ということで、担当者が全ページを卓上のプリンターでコピーしようとした。
そのコピーのやり方だが、単に冊子を両面180度見開いてするのではなくて、これもタイ人がよくやる、開いた冊子の半分をぐるりと360度裏返して巻き付けた形にして、片ページずつコピーしようとしたのだ。
しかし、外国人身分証明書の冊子は非常に古いので、強度が弱い。
そうしたら、なんと・・・
外国人身分証明書の冊子が傷んで、表紙の付け根が背に沿って2センチ以上切れてしまった。
さらに、背とページの接着が弱くなって、中のページの一部(幸い記載事項はなし)が脱落してしまった。
これは私には、かなりのショックだ。
せっかく何年もかけてタイ永住権を取得して、ようやく外国人身分証明書が手に入ろうというその瞬間に、なんと、私の手に渡る前に目の前で冊子が損傷とは・・・
しかし担当者が言うには、
「表紙が完全に脱落したり、内容がわからないぐらいに損傷しない限りは有効だ」
「テープで補修して置け」
とのことだった・・・
このようなことで、かなりすったもんだはしたものの、結局、1日に3回警察署に足を運んだ結果、外国人身分証明書は無事に取得することが出来た。
ただ、外国人身分証明書はずっと長く保持する冊子であるだけに、それが私の手元に渡る前に損傷してしまったのは、かなりショックだ・・・
外国人身分証明書の詳細はこちら
外国人身分証明書は、永住者以外には、その存在すら知らないと思う。
どんな書類で、何が書いてあるのだろうか?
詳細はこちらにまとめた。
参 照:外国人身分証明書 Certificate of Alien とは何か?
外国人身分証明書の延長については、こちら。
参 照:外国人身分証明書の延長