タイ永住権者が得る3つの冊子とその維持

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2021年2月

タイ永住権者が得る3つの冊子と、その維持

タイ永住権の維持からつづく。

タイ永住権を取得すると、最終的に次の3つの冊子を手にする。

◆「居住証明書」 Certificate of Residence  入管が発行

◆「外国人身分証明書」Certificate of Alien  警察署が発行

◆「住居登録証」(タビアンバーン)  郡役所(区役所・市役所)が発行

以下では、これらそれぞれの維持ついて記して置く。

「居住証明書」Certificate of Residence の維持

入管が発行し永住権を証する「居住証明書」Certificate of Residence

「居住証明書」は定期更新もなく無期限に有効!

タイ永住権を直接的に証明するのは、入管が発行する「居住証明書」Certificate of Residence だ。
「永住証明書」と呼びたいところだが、正式名称がタイ語・英語ともそうではないので、このサイトでは正式名称に合わせて「居住証明書」と呼ぶ。

「居住証明書」に有効期限はない。定期的な「更新」もない。
一度取得すれば一生涯、無期限に有効だ。(タイ入国者法第48条)

但し、冊子のページ残余がなくなった、記載事項に変更が生じた、汚損・紛失したと言った場合には、バンコク入管の永住権担当デスクで再発行してもらう必要がある。

「居住証明書」は、上のようなことがあればその都度、入管で追記や再発行の手続きが必要になる。
しかし、もしそのようなことがないならタイ国内にいる限りは、一度取得してしまえば何年でも一生涯有効だ。
そのまま、特に何もすることなく維持して行くことが出来る。

タイ出入国には事前の手続きが必要

タイ国外に出る場合には注意が必要だ。
「居住証明書」はそのままで出国すると失効し、永住権が失われてしまう。
出国するなら、永住権維持に事前の手続きが必要だ。

永住者のタイ出入国は、パスポートのみでは出来ない。
タイの出入国審査では「パスポート」と「居住証明書」の「2冊の提示」が必要になる。

永住者には、非永住の一般外国人のような「再入国許可」(リエントリー・パーミット)が発行されない。
代わって、出国前に必ず入管に出向いて、

「居住証明書」に「裏書き」Endorsement สลักหลัง のスタンプ(1年有効)
「パスポート」に 「ノンクォーター・イミグラントビザ」(「裏書き」の期限まで有効。最長1年。マルチ/シングル)のスタンプ

この双方のスタンプを、パスポートと居住証明書にそれぞれ取得せねばならない。
双方のスタンプは、バンコク入管の永住権デスクか、地方在住者なら居住県を管轄する地方入管でも取得できる。
但し、空港や国境では発行されない。市中の入管オフィスでのみ取得可能だ。

この委細は、こちらにまとめた。

参 照:裏書きとノンクォーター・イミグラントビザの取得

永住者の出入国にはこのように、「居住証明書の『裏書き』」と「パスポートの『ノンクォーター・イミグラントビザ』」の双方が「対」なって、はじめて再入国の効力が得られる。
一方のスタンプだけでは再入国の効力がないので、要注意だ。

スタンプの有効期限内にタイに戻れば、永住権は失効しない。
それなので、この二つのスタンプが事実上、「永住者用の再入国許可」だと言える。

「永住権は1年以上タイ国外にいると失効する」は、正確ではない

「永住権は1年以上タイ国外にいると失効する」と言われることがあるが、正確ではない。
正しく言うと、「裏書き及びノンクォーター・イミグラントビザ の有効期間内」(発行日から1年)に戻らなければ、失効する。
取得したその日に出国すれば最大の1年間国外滞在できることになるが、そうでなければ、出国可能期間はより短くなる。例えば、3か月前に取得したスタンプで出国するなら、出国可能期間は9か月だ。
なので、「1年以上タイ国外にいるから」失効するのではなく、「1年間の再入国効力を持つスタンプの有効期限内にタイに戻らなかったから」失効するのだ。

期限内なら出入国には回数・日数とも制限がない

タイ永住権を維持する上で、「年間のタイ国内最低滞在日数」は現状、特に何の規定もない。
そのため「裏書き」及び「ノンクォーター・イミグラントビザ 」の有効期間のうちにタイに戻っているなら、年間のタイ国内滞在日数がどれだけ少なくなっても、永住権の効力には、現行の制度運用下では何の影響もない。
今後の永住意志やタイでの生活実態の有無が調査されるようなこともない。

「裏書き」と「ノンクォーター・イミグラントビザ 」の取得回数や頻度には制限がなく、何度でも再取得することが可能だ。

これが意味するのは、タイ永住権を取得した後に、生活本拠を日本や他国に構えて年間の大半をタイ国外で過ごしたとしても、タイに登録上の住所さえ維持されていて、タイを出国しても「裏書き」と「ノンクォーター・イミグラントビザ 」の有効期限内に戻っていれば、タイ永住権を維持する上で問題になることがない。
年に1度タイに数日だけ戻って「裏書き」と「ノンクォーター・イミグラントビザ 」を取り直したらすぐまた出国をするような暮らしを続けるのも、現行のタイ入管の制度運用下では可能だ。
この辺は、大らかだと言える。
もっとも、こういう運用が今後もずっと変更されないという保証はないが。

出入国が多いと居住証明書の冊子維持に負担が

永住者のタイ出入国審査時には、「パスポート」と「居住証明書」の双方を提示するが、すると、タイの出入国スタンプはこの「双方」に押印される。
「居住証明書」にもまるでパスポートのように、タイの出入国スタンプがたまってゆく。
そのため出入国頻度が多い人には、「居住証明書」の押印用の余白(15ページ)が一杯になってしまう。
ページ残余がなくなってしまったら、さらに出入国するためには、バンコク入管の永住権デスクで冊子の再発行が必要だ。
再発行は4~5日要すそうで、申請と受取で2回出向く必要がある。
この再発行手続きを実際に取るとなると、再発行手数料自体は1,900バーツだが、遠方ならバンコクまでの旅費+宿泊費も発生する。結構な負担だ。

かなり時間がかかってしまうそうだが、それでも良いなら、再発行は居住県を管轄する地方入管で申請・受領することもできる。
この場合、地方入管がバンコク入管に取りつぐ形になる。

なお、ページ残余がなくなっても、出国せずにタイ国内にいる分には、冊子は無効にはならずずっと有効だ。
次の出国予定が当面ないなら、すぐに再発行せずとも問題はない。

「居住証明書」へのタイ出入国スタンプは、バンコクの空港(スワンナプームとドンムアン)をベースに出入国するなら、「自動化ゲート」に登録して利用することで、押印なしになる。
自動化ゲートで出入国していれば、「居住証明書」のスタンプ押印欄の余白がなかなか埋まらないので、同証明書の「冊子の寿命」を延ばすことが出来る。

参 照:出入国審査 「自動化ゲート」の登録

「外国人身分証明書」Certificate of Alienの維持

所管警察署が永住外国人に対して発行する「外国人身分証明書」Certificate of Alien

「外国人身分証明書」Certificate of Alien は、永住者のみが所持する冊子で、居住地を管轄する警察署が発行する。
非永住の外国人には、申請も取得もできない。
有名無実な規定だが制度上、永住者には冊子の常時携帯義務があるとされている。(タイ外国人登録法第17条)

「外国人身分証明書」には、「居住証明書」と違って5年毎の延長がある。
が、維持はたやすい。

延長手続き先は、管轄の警察署だ。
手続きは警察署に出頭すればよいという程度で、ビザ延長のような膨大な書類の提出はなく、即日ですぐに済む。
延長手数料は、800バーツ。

「外国人身分証明書」は、もし延長が遅れてしまってもすぐさま無効にはならず、罰金(500バーツ)は取られるが、延長手続き自体はできる。
規則には、1年遅れた場合の取扱い方法まで定められている。

但し、警察署に「外国人身分証明書」の延長手続きをする者が訪れることはめったにないので、手続きの時期だからと突然行っても担当者がいないとか、新人になっていてやり方が分からず、結局その日は出来ないこともある。
いきなり行かずに警察署に事前に言っておいた方がいい。
私は、警察署の担当者の名前と携帯番号をもらって、必要に応じ直接連絡出来る形を作っている。

外国人身分証明書の延長の委細は、こちらを。

参 照:外国人身分証明書の延長

「住居登録証」(タビアンバーン)の維持

「住居登録証」(タビアンバーン)。 所管の郡役所・区役所・市役所(一部)で永住外国人の名前を追記する。

「住居登録証」(タビアンバーン)の維持はきわめて簡単で、特に何もする必要はない。
有効期限がないので、そもそも「失効」や「延長」という概念がない。
永住外国人の登録情報はタイ内務省の住民登録システムに収納されていて、転居した場合には転居先の住居登録証に名前を移す必要があるが、それ以外には特段何もする必要はない。
仮に冊子を紛失したとしても、郡役所等で再発行してもらえばよいだけだ(20バーツ)。
日本で言えば就籍したら戸籍はもう消えないのと一緒で、永住権自体が失われない限りは、特段に「維持」を心がける必要はないといえる。

住居登録証(タビアンバーン)は、冊子自体が「写し」

なお、住居登録証(タビアンバーン)として各家が保管している冊子は、正式には「住居登録の謄本」サムナオ・タビアンバーン สำเนาทะเบียนบ้าน と言う。
冊子の表紙に正式名称がそのようにはっきり書かれている。
「サムナオ」はタイ語で「謄本」「写し」「コピー」と言った意味だ。
だから、一見して登録証そのもののように見える立派な冊子だが、実はそれ自体が謄本だ。
では、原本に相当するものはどこにあるかというと、タイ内務省の住民管理システムに、データとして存在している。
一般にタビアンバーンと称している冊子は、そのような住民登録データからの謄本だというわけだ。

この事実は一般のタイ人でも大半が誤解していて、冊子の表紙にはっきり「住居登録の謄本」サムナオ・タビアンバーンと明記されているにもかかわらず、その冊子自体が謄本ではなくて「原本」だと思っていることがほとんどだ。

ただ、これにこだわるとややこしいのでタイ人の一般認識に合わせて、本サイトではこの冊子を単に「住居登録証」(タビアンバーン)と呼んでいる。

結局、「居住証明書」Certificate of Residence の維持が一番大切

このようなことで、ずっとタイ国内にいるのであれば永住権維持に必須なのは、警察署で5年に1度、「外国人身分証明書」を延長することだけだ。

最大かつ唯一の留意点は、タイを出入国する場合だ。
永住権を証する「居住証明書」Certificate of Residenceは事前手続きなしに出国すると失効するので、
あらかじめ「居住証明書」 に「裏書き」を、パスポートに「ノンクォーター・イミグラントビザ」をきちんと取得して、有効期間内に出入国する。
これにより「居住証明書」を誤って失効させないようにする、という一点に尽きる。

「外国人身分証明書」Certificate of Alien と「住居登録証」(タビアンバーン)は、永住資格に付随して得るものだ。
永住権を証する「居住証明書」が失効すれば、「外国人身分証明書」と「住居登録証」の保持資格も、連鎖的に失われる。
その逆はない。

なので結局のところ、「居住証明書」をタイ出入国で誤って失効させないようにすることこそが、永住権そのものの維持であり、「外国人身分証明書」と「住居登録証」の維持でもあると言える。

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