定年退職とタイ永住権

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2022年12月

定年退職とタイ永住権

定年すると永住権の可能性が大きく狭まる

ここでいう定年退職とは、タイ国内で雇用されている人の定年だ。
タイで会社等に雇用されている場合、定年退職してしまうとタイ永住権を得られる可能性が著しく狭まるので、注意が必要だ。

定年退職すると、自らが就労していて一定収入があることを前提に永住権申請することが出来なくなる。
具体的には、永住権申請カテゴリー「就労」、それにタイ人と結婚している場合のカテゴリー「人道的な理由」の「タイ国籍者の扶養者」で申請する可能性が、どちらもなくなる。

この二つのカテゴリーは、タイ永住権申請の言わばメインルートだ。
この二つのルートが閉ざされる影響は甚大だと言える。

もちろん、それでも定年後にもタイ永住権の道がないわけではない。

定年後にも、十分な資産を築けていれば、カテゴリー「投資」で永住権申請する道がある。
他に、たとえ本人は定年退職していても、タイ人配偶者(または永住権を持つ外国人配偶者)ないし子が、就労して一定以上の収入があるなら、「被扶養者」として申請する道もある。

参 照:「被扶養者」でタイ永住権を申請

定年後の可能性は二つだけ

問題は、定年退職して無職になってしまったなら、タイ永住権を得られる道は「投資」か「被扶養者」の、この二つに限られてしまうことだ。
いずれも、当てはまる人は限定的だ。決して一般性が高い方法とは言い難い。

「投資」での永住権申請には、タイに1千万バーツ以上の投資が必要だ。その資金が外国からタイに送金された根拠も示さねばならない。
タイで定年まで普通に勤め人をして、そこまでの資産を築いて実際に申請に漕ぎつけるのは、稀だ。

「被扶養者」にしても、タイ人ないし永住権を持つ外国人と結婚していなかったり子がいないなら、そもそも可能性がない。

いずれも「就労」に比べて一般性が低く、誰でもが当てはまるわけではないのは、すぐにお分かりだろう。

それなので、例えば「投資」で申請するほど資産がなく、タイ国籍ないしタイ永住権を持った配偶者もいないとか、配偶者か子があっても十分な収入を得ていないなら、定年後には永住権申請は不可能だ。

もっとも、子(タイ国籍ないしタイ永住権保持)がいる場合には、子が成長して十分な収入を得られるまで待つことで、子に扶養される「被扶養者」として申請出来る可能性はある。
そのためには本人も申請時点で3年以上、ノン・イミグラントビザを切らさずに保持していなくてはならない。

安定雇用下で永住権の必要性を感じることは少ないが・・・

タイで会社等に安定雇用されていると、雇用元がしっかりして安定しているほど、ビザも労働許可証も雇用元がきっちり整えてくれる。
本人は毎年ただ入管に足を運ぶだけ。たとえ不備が指摘されようと雇用元の方が処理してくれる。
だから本人には、タイ滞在ステイタス(ビザ)の維持に努力が必要になったり困難を感じたりすることは、まずない。
そのため、安定して雇用を受けている間は、あえて永住権を得る意味などないと感じがちだ。

しかし、定年退職してしまったならもう、そのような恩恵はない。
自分自身のタイ滞在ステイタスを、自分自身で維持して行かなくてはならなくなる。
人によっては、すべて自分で準備するビザ延長作業を初めて経験して、その煩雑さに驚く。

日本に帰るという選択肢もありそうだが、定年するまでの長期をタイで過ごして日本に帰れるかと言うと、よほど計画的に日本移転を準備して来たのでなければ、なかなかそうはいかない。

その段階で困難を感じて、初めてタイ永住権取得を思い立っても、大概は遅すぎるということになる。

さらには、たとえタイ人と結婚していても、結婚Non-Oビザは配偶者と離別したら、もはや延長できない。
(タイ国籍で有職の子がいて、子から扶養されるなら別)

これらを勘案すると、タイで安定雇用を受けている場合でも、50歳を過ぎたら、定年後の滞在ステイタスを永住権取得を含めてどうするかを、真剣に考えた方が良いタイミングに入ったと言えそうだ。

定年退職後のタイ滞在ステイタスの不安定化

このように定年退職後には、タイ滞在ステイタスを自分自身で維持して行くことになり、定年前までにはなかった不安定さが生じる。

もちろん、ロングステイビザやタイランド・エリート、タイ人と結婚していれば結婚Non-Oビザに転じることで、タイ居住を続けて行く道があり、実際のところ多くの人がそうしている。

ただ、ロングステイビザにしても、制度自体の今後の永続性が担保されているものではない。
マレーシアがいい例で、長期滞在ビザMM2Hの収入・資産要件が急に3~4倍に引き上げられ、取得が大幅に難化してしまった。
居住する上ですべての前提である肝心のビザが維持できなくなれば、その時点で「退場」するしかない・・
タイについても今後のタイ政府の方針変更で、いつどのようにでも制度変更されたり打ち切られたりする可能性が、常にあることには留意しておくべきだろう。

永住権を取得することで、そういう長期滞在系ビザの先々の制度的不明瞭に由来する不安定さを完全に断ち切ることが出来る、という側面は確かにある。

永住権を取るなら定年前の方が機会が多い

もちろん、「だから永住権の方がいいよ」などと言いたいわけでは決してない。
人生設計も価値観も人それぞれだ。
ここで言及しておきたいのは、もしもタイ永住権の取得を考えるのならば定年前の方が機会が多く、定年退職後には機会が著しく狭まるという事実だ。
将来のタイ永住権申請を検討する上で、このことはよく留意して置いた方が良いと思われる。

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