2022年8月
目次
「タイ出入国記録」の後日取得
タイ政府の各部門が保有する個人情報は、「公的情報法」 Official Information Act, B.E.2540 พ.ร.บ. ข้อมูลข่าวสารของราชการ พ.ศ.2540 の第25条に基づいて、本人の請求により開示することになっている。
同法第25条の定めるところは、以下のとおりだ。
「各人は国家が有する個人情報と関連情報を当然に知る権利があり、本人または代理人から文書で請求があった時には、各公的機関はこの情報を閲覧または謄本交付しなければならない」
タイ入管はあまり積極的に広報していないが、入管が保持する各人の「出入国記録」もこの規定に基づいて、請求があれば謄本を交付することになっている。
わたしは上に基づいて、実際に自分の過去の出入国記録を入管から取得した。
以下に紹介しよう。
A4横のこのような書類だ。表記はタイ語のみだ。
タイ出入国記録の謄本は、タイ入管が発行した公的な証明として効力を持つことになる。
例えば、永住者が自動化ゲートを利用してタイを出入国した場合、スタンプの押印がないので、パスポート及び永住権を証する「居住証明書」Certificate of Residenceには、タイを出入国した記録が残らない。
そのため、タイで加入した海外旅行保険を請求する際に出入国日を示すような場合や、何らかの理由である時期にタイ国内に居なかったことを証せねばならないような場合などには、出入国日を示すのに困ったことになる。
そういう場合をはじめ、過去の出入国を公的に証明する必要が生じた場合に、入管から取得した出入国記録の謄本が、役に立つことになる。
タイ出入国記録の内容
タイ出入国記録の謄本は、上に挙げたような体裁で、A4横でリスト形式で作成される。
申請時にはあらかじめ、記録が必要な時期を「いつからいつまで」と、年月日で申請書に指定するようになっている。
指定した期間の全出入国記録が、リスト化されて新しいものから順に明示される。
レコードが多ければ、何ページかに渡る。
上述のように表記はタイ語のみで、記載項目は、次の通り。
◆氏 名
◆性 別
◆生年月日
◆国 籍
◆出国/入国の別
◆ドキュメントの種類(パスポート など)
◆ドキュメントの番号
◆搭乗便名
◆出国/入国した年月日と時間
◆出入国カード番号
◆ビザの種類
◆出国/入国した入管名
申請先
申請先はタイ全国に5か所の「入管ディビジョン本部」だけ
過去の出入国記録の申請先は、入管は入管でも、タイ全国で5か所の「入管ディビジョン本部」だけだ。
この5か所のうち、自分が住む地方を管轄する入管ディビジョン本部に行って、「情報テクノロジー部」ฝ่ายเทคโนโลยีตรวจคนเข้าเมือง Information Technology Sub-division に申請する。
入管各ディビジョンの管轄と本部は、以下の通りだ。
1・バンコク:ディビジョン1 本部:バンコク ※2022年8月15日からノンタブリーに移転
2・中部タイ:ディビジョン3 本部:バンコク
3・東北タイ:ディビジョン4 本部:コーンケン
4・北部タイ:ディビジョン5 本部:チェンマイ
5・南部タイ:ディビジョン6 本部:ハートヤイ
申請先は、以下の通り。
◆バンコク居住者は、バンコク市内・スワンプルー通りの入管第1ディビジョン本部
※入管発表によると、2022年8月15日から、ディビジョン1本部及び情報テクノロジー部はノンタブリーに移転するという。スワンプルーの方の機能は入管収容所のみになるそうだ。
申請前には念のため、電話して場所を確認した方がいい。
◆中部タイ居住者(バンコク以外)は、入管第3ディビジョン本部
(バンコク・ラックシー区の官庁合同庁舎B棟3階)
◆東北タイ居住者は、コンケーンの入管第4ディビジョン本部
◆北部タイ居住者は、チェンマイの入管第5ディビジョン本部
◆南部タイ居住者は、ハートヤイの入管第6ディビジョン本部
※トラート・チャンタブリー方面のいわゆる「東部」は、中部タイを管轄する「ディビジョン3」の管内。
申請先はこのように、入管は入管でも、ビザ延長等を取り扱うおなじみの「県入管」ではない。
北部タイや東北タイといった1管区(ディビジョン)全体を管理統括する「ディビジョン本部」の方だ。
そこの「情報テクノロジー部」ฝ่ายเทคโนโลยีตรวจคนเข้าเมือง が取り扱う。
ディビジョン2の管轄は国際空港
なお、上の入管ディビジョン一覧には「ディビジョン2」が欠けているが、間違いではない。
ディビジョン2は役割が少々変わっていて、地理的な管轄区域はなく、全国の主要な国際空港での出入国管理を担当している。
国際空港はディビジョン2が管轄する主要な空港と、立地の地方ディビジョンが管轄するその他の空港に分かれている。
ディビジョン2本部はスワンナプーム空港のすぐ近くだ。
ディビジョン本部の場所は県入管とは別
入管ディビジョン本部の場所はいずれも、県入管とは別のところにある。
例えばチェンマイならば、チェンマイ県入管とディビジョン5本部は10キロ以上離れた全く別の場所だ。
ディビジョン本部は管理部門なので、在留外国人がふだん窓口手続きに赴く場所ではないし、一般人が直接出向くことは稀で、なじみがない。
行く場合には、県入管と間違えないように、事前に場所をよく確認した方がいい。

管轄区域の端からだとかなりの遠出になる
申請先は上記のようにタイ全土に5か所の入管ディビジョン本部しかないため、バンコク(ディビジョン1)を別にすれば、各ディビジョンの管轄区域の端の方に住んでいる場合、申請に出向くのはかなりの遠出となる。
例えば、私が住むのは北部タイのチェンマイだが、北部はチェンマイを本部とする「入管第5ディビジョン」の管轄区域だ。
第5ディビジョンの管区は北はチェンラーイから南はペッチャブーン、ウタイターニーにまで及ぶ。
南タイならばハートヤイを本部とする入管第6ディビジョンだが、北はチュンポーンから南はマレーシア国境の各県までが管轄だ。
このような広大な管轄区域の末端域から各ディビジョン本部に出向くとなれば、ちょっと現実的ではないぐらいの距離がある。
地方在住者が、自らの居住地を管轄しない他のディビジョン本部でも申請できるのかは、私には不明だ。
関心ある方は、ご自分で確認頂きたい。
申請と受領
申請書類
入管ウェブサイトの案内(タイ語)が掲げる申請書類は、以下の通りだ。
1・申請書
2・パスポート
発行手数料:無 料
※代理人による申請も可。
その場合には、
1.申請書
2.委任状(要本人・代理人・証人のサイン+収入印紙 10バーツ)
3.代理人の身分証明書
なお、永住者が入管で手続きする際にはたとえ明示されていなくても、永住権を証する「居住証明書」 Certificate of Residence と、警察が永住者に発行する「外国人身分証明書」 Certificate of Alien を、常に持参した方がいい。
発行までの所要日数
発行までの所要日数は、入管ウェブサイトの案内には何も明示されていないが、私がチェンマイのディビジョン5本部に申請した際には、「約1週間かかる」と言われた。
実際の受領日も、丸1週間後だった。
このように当日その場では発行されないので、申請と受領で2度足を運ぶ必要がある。
2度足を運ぶとなると、私のように近くに住んでいるのであれば大した手間ではない。
しかし、遠方からの申請であれば、多大な手間と経費が発生することになる。
ただでさえ、各ディビジョンの管轄区域は1地方全体と広大だ。
遠方からなら事前に電話で問い合わせた方がいい(たぶん)
わたしには可否は不明だが、遠方から申請するのであれば、どうにか1度の出頭で済ませる方法はないのか、あるいはすべて郵送で済ませる手はないのか等を、事前に電話してよく相談した方がいいと思われる。
私の申請事例
今後の活用可能性を研究したくて、試しに申請
わたしには特段に出入国記録が必要になる用件はなかったのだが、今後さまざまな証明に使える可能性があるかも知れないと思い、どんな体裁の書類なのかを確認する意味で、一度入手して見ることにした。
2022年7月下旬に、チェンマイの入管第5ディビジョン本部に申請に行った。
チェンマイには20年近く住んでいるが、ここに行くのは初めてだ。
場所は市内からかなり離れた郊外だ。私の家からは車で30分ぐらいだった。

ディビジョン本部は管理部門なので、県入管と違って外来者はほぼ全くおらず、人の出入りもなくて閑散とした印象だ
丁寧な対応に驚き!
1階の案内で「出入国記録の申請だ」と所用を告げると、2階の担当部署「情報テクノロジー部」に案内された。
係員の対応がずいぶん丁寧で、ワイで挨拶してくれ、担当部署まで先導してくれて中で訪問要件を説明し、若い女性担当者に繋いでくれた。他に外来者はおらず、すぐに対応してもらえた。
態度にしても話しぶりにしても柔らかで、これが県入管と「同じ入管」だとはとても思えない丁寧な対応ぶりには、驚きだ。
担当者とやりとりした感触では、出入国記録を実際に申請に来る人は、なかなかいないようだ。
申請書とパスポート等のコピーを提出
申請書(タイ語・英語併記)を1枚書かされて、パスポートと永住権を証する「居住証明書」 Certificate of Residence のコピーを取られた。
県入管のように「自分でコピーを取ってこい」とは言われずに、係員がどこかでやってくれて、わたしは各コピーにサインしただけ。
申請書には、出入国記録が必要な期間を指定するようになっていて、「いつから」「いつまで」を、それぞれ年月日を書き込んで指定する。取得目的も明記するようになっていた。
わたしは試しにもらってみるだけなのでとりあえず、現パスポートを取得した2018年9月の適当な日から、申請月のついたちまでの、約5年半を指定した。
取得理由はもっともらしく書いておいた。
申請書とサインしたコピーを提出したら、申請はそれだけ。
ただ、交付は即日ではなかった。
本来はタイ人だけ?
この担当者が言うには、
「これで申請は受理しました」
「発給まで約1週間かかります」
「出入国記録の交付は本来はタイ人が対象です。でも、あなたは永住者で居住証明書 Certificate of Residence を所持しているので、たぶん出せると思います。ただ、可否は上司の判断を仰がなくてはなりません。判断が示されたら電話でお伝えします」
とのことだった。
「本来はタイ人が対象」というのは、本当にそうなのかとちょっと引っかかった。
根拠法にはそんなことは書いていないし、申請書のフォームがタイ語・英語併記で準備されているのは、外国人の申請を想定しているからに違いないではないか。
もっとも、制度上はそうであっても運用はまた別だというのは、タイではよくあることではある。
が、いずれにせよ永住者なら大丈夫だろうと、突っ込まずに聞き流した。
この日の午後、この担当者から電話があった。
「上司の判断が出て、あなたの出入国歴は発給できます」
「約1週間かかりますが、準備が出来たら改めて電話します」
向こうからきっちり連絡をくれて、丁寧なものだと思った。
自分が発給してもらえるならそれでいいので、発給できる理由が永住者だからなのか、外国人も誰でも可能だからなのかは、特に尋ねなかった。
関心の方は、ご自身で確認頂きたい。
丸1週間後に無事受領
翌週、ちょうど丸1週間後の朝に入管担当者から電話があり、書類が出来たから都合が良い時に取り来いと言う。
その日のうちに再び入管第5ディビジョン本部に向かい、受領した。
ちょうど案内のところで立ち話をしていた職員3人がワイで挨拶してくれて、何の用件かと尋ねるので、「出入国記録の受領だ」「部屋は分かっているから」と答え、ひとりで2階の情報テクノロジー部に向かう。
ここでは会う人がみな、県入管のそっくり返ってぞんざいな連中とは大違いで、いわば「普通に客として遇する対応」をしてくれる。当たり前の対応ではあるが、入管がそれをやるのが新鮮な驚きだ。
「情報テクノロジー部」の部屋に入って「受領に来た」と告げると、電話をくれた例の若い職員が準備されていた書類をすぐ渡してくれ、受領簿にサインをした。
受領簿の自分のサイン欄の他の行をちらと見たら、当該ページにある範囲では申請者はみなタイ人のようだ。
なお、この書類は無料なので、支払いはない。
書類を見てみたら計4ページで、1ページ目が入管ディビジョン5 情報テクノロジー部長名の発給通知書。
2~4ページ目までの3枚が出入国記録のリストで、わたしの約5年半の記録が19レコードあった。
一回の出国または入国が1レコードになる。だから、1往復すれば2レコードだ。
表記はタイ語のみ。
受領はこうして、書類を受け取って受領簿にサインするだけだったので、3分もかからずに終わり。
わたしはその後、意気投合したその職員と他愛のないことをしばらく話し込んでから、帰路についた。
「タイ出入国記録」申請の委細は以下を参照
タイ出入国記録の申請先・各ディビジョン本部の管轄県・申請方法の委細は、次の入管サイトに説明がある。
関心の方は、参照頂きたい(タイ語のみ)。
การตรวจสอบข้อมูลการเดินทางเข้า-ออกราชอาณาจักร ตามมาตรา ๒๕ แห่ง พ.ร.บ.ข้อมูลข่าวสารของราชการ พ.ศ.๒๕๔๐