2021年1月
目次
タイのIDカード
タイの永住外国人は、住居登録証(タビアンバーン)に名前が記載されて「13ケタのタイID番号」が付与されると、タイ内務省が発行する「非タイ国籍者IDカード」を取得することが出来る。
このIDカードは、タイ国籍者が持つ「タイ国民IDカード」とは別種だ。カードの色も体裁も異なる。
「非タイ国籍者IDカード」を得るには、永住者の住居登録証への登録に伴って自動的・付随的には発給されないので、自らカードの取得手続きを取ることが必要だ。
何もせずに放っておくと、いつまでももらえない。
もっとも、住居登録証(タビアンバーン)へ登録した役所によっては、IDカードの発行まで一体的にやってくれるところもあるようだ。
なお、「非タイ国籍者IDカード」は永住者でなくとも、ノン・イミグラントビザで滞在する非永住外国人でも黄色の住居登録証 トーロー13 を作成すれば、取得することが出来る。
住居登録証を作ると非永住者でもタイ内務省システムに住民登録され、13ケタのID番号が付与されるからだ。
つまり、在タイ外国人は永住/非永住を問わず、住居登録証に登録されて13ケタのID番号が付与されたならば、タイのIDカードを作れるわけだ。
但し、非永住者はノン・イミグラントビザの保持者に限られる。ビザなしやツーリスト・ビザでは不可だ。
IDカード取得は、厳密には義務だが・・・
厳密に言うと、「タイ国民登録法」やタイ内務省中央登録局「非タイ国籍者IDカード発行規則」に従えば、外国人が「住居登録証」(タビアンバーン)に氏名が登録されると、永住・非永住を問わず、「非タイ国籍者IDカード」を「取得せねばならない」とされている。
つまり法規則上、取得は任意ではなくて義務なのだ。
しかし、入管も郡役所も永住者に対して特に取得を促すような指導はしていないし、何も手続していないからと言って取得を強く求められたり罰せられるような現状にはない。
なので、法規則上はともかく運用実態としては、取得するかどうかは当人の任意だ。
永住者専用のIDカードはない
またそのようなことから、永住者が取得するIDカードは永住者専用というわけではない。
タイには、アメリカのグリーンカードのような「永住者専用のIDカード」は、存在しない。
このページでは以下に、タイのIDカード全般に関する情報を詳しくまとめた。
取得の実際については、こちらを。
参 照:「タイIDカードの取得」
IDカードを取って出来ることについては、こちらを。
タイは国民背番号制
タイは国民背番号制だ。全国民に13ケタのID番号が付与される。
タイ国民以外にもタイに住む外国人・無国籍者も、永住/非永住を問わず、住民情報が内務省システムに登録されて住居登録証(タビアンバーン)ないし経歴登録書(タビアンプラワット)に名前が記載されると、やはり13ケタのID番号が付与される。
そういった、住民情報が内務省システムに登録されID番号が付与されている人が取得でき、携行が義務づけられている身分証明が、タイのIDカードだ。
IDカードは1種類ではなく、タイ国民か外国人かをはじめとしたステータスの違いに応じて、大きく3種類がある。
このページでは以下に、それぞれのカードを詳しく紹介したい。
ID番号に関する委細はこちらに書いたので、参照されたい。
参 照:タイのID番号 -数字と意味-
3種類のIDカード
タイ人(タイ国籍者)向けは水色
タイ人(タイ国籍者)のカードは水色で、「国民IDカード」バット・プラチャムトゥア・プラチャーチョン บัตรประจำตัวประชาชน Thai National ID Card と言う。
通常は略して、バット・プラチャーチョン บัตรประชาชน と呼ばれる。

現在発給のものは上のように、ICチップが組み込まれている。
外国人・無国籍者向け「非タイ国籍者IDカード」はピンク
外国人・無国籍者には、ピンクのIDカードが発行される。
名称がタイ人向けと異なり、「非タイ国籍者IDカード」バット・プラチャムトゥア・コン・スン・マイミー・サンチャート・タイ บัตรประจำตัวคนซึ่งไม่มีสัญชาติไทย Non Thai Identification Card と呼ばれる。
一般には、タイ人用カードだけでなくこちらも含めてバット・プラチャーチョンとも言うが、厳密には違う。
なにより、「非タイ国籍者IDカード」の裏面には注意書きで、「このカードは国民IDカード(バット・プラチャーチョン)ではありません」บัตรนี้ไม่ใช่บัตรประชาชนと、ご丁寧にも明記されている。
「非タイ国籍者IDカード」には、ICチップはない。
また、写真の位置がタイ人用とは異なる。タイ人用なら写真がカード右下だが、こちらは左上だ。
このピンクのIDカードには、いくつかのカテゴリーがあって、様式も異なる。
「非タイ国籍者IDカード」周辺3か国からの労働者向けは、英語・タイ語表記
これは周辺3か国(ミャンマー・ラオス・カンボジア)からの労働者に限って発行されるIDカードだ。
タイ語・英語が併記されている。

周辺3か国労働者向けは、ID番号が 00-から始まる。
区切り方が違っているだけで、ケタ数自体は同じで13ケタだ。
これは裏面だ。
裏面の色は3種類ある。この緑の例はミャンマー人で、カンボジア人はピンク、ラオス人は青と決まっている。
裏面がそのままで「労働許可証」ใบอนุญาติทำงาน になっていて、雇用者名・勤務先住所・職種が書き込まれている。

このように周辺3カ国労働者向けのカードは、IDカードと労働許可証が1枚で一体になっている。
「非タイ国籍者IDカード」その他の外国人・無国籍者向けは、タイ語表記のみ
周辺3か国労働者以外の、その他の外国人・無国籍者向けIDカードは体裁が異なり、タイ語表記のみだ。
なぜ英語併記でないのかは、不明だ。
実際のところ、日常生活で実用する上では、少なくとも名前にアルファベット表記がないのは、かなり使い手が悪い・・・
そしてなぜか、国籍の表示がない。
このタイ語のみのピンクIDカードには、所持者本人のカテゴリーに応じた下位分類がある。
ID番号の真下の欄に、タイ語でカテゴリーが書いてある。
このカテゴリー表記に違いはあっても、カードの体裁自体はどのカテゴリーでも同じだ。
カテゴリー種別は多く、全部を取り上げても切りがないので、関連するものだけを少し挙げてみよう。
非永住の一時滞在外国人は「一般外国人」คนต่างด้าวทั่วไป

上は、私がまだ非永住一時滞在者(結婚Non-Oビザ/黄色の住居登録証 )の、2018年当時に取得したカードだ。
ID番号の真下の赤丸のところを見ると、カテゴリーが「一般外国人」คนต่างด้าวทั่วไป と書いてある
ID番号は一桁目が 6- から始まっている。
最近発行のカードはカテゴリー表記が変わったようで、「一般外国人」ではなく、「外国人入国者」คนต่างด้าวเข้าเมือง とされているようだ。
そのほかカードに記載されているのは、以下の項目だ。
名
姓
生年月日
住 所
カード発行日
有効期限満了日
このように、ピンクのIDカードには「国籍」の表示がない・・・
少数民族の例

この例の所持者は、無国籍の山岳民族だ。
ID番号の真下にサブカテゴリーが、「高地民」(山岳9民族)ชุมชนบนพื้นที่สูง(ชาวเขา 9 เผ่า) と書いてある。ID番号はやはり一桁目が 6- だ。
このように、サブカテゴリーが異なれば、ID番号の真下の欄の表記が変わって来る。
実は、タイには山岳民族だけに限らず、タイ国籍に就籍できない無国籍の人たちは、数多い。
このような無国籍者でも、住民登録がなされる。
2018年のタイ政府の人口統計では、登録済み無国籍者の数は、40万人におよぶ。
なのでこのピンクIDカードの保持者も、それだけ多い。
このような無国籍でこのカードを保持する人たちは不法滞在者ではなく、合法にタイに住んでいる。
しかし、居住地・タイ国内移動・就労等に、いろいろな制限がある。
永住者の例
以下は、私が永住者になってから2020年に取得したIDカードだ。

ID番号の一桁目が非永住の頃の 6- から変更になり、8- から始まっている。
不思議なことに、赤丸で囲ったID番号の真下のカテゴリー表記欄には、何も記載がない。ただの空白になっている。
もちろん私のカードの発行を誤ったわけではない。理由は不明だが、永住者にはこういう仕様だ。
そのため、永住者のIDカードは、一見しても「永住者である事実が分からない」という難点がある。
「番号が8- から始まっているから、あなたは永住者ですね」などと分かる人など、まずいない。
せっかく表記スペースがあるのだから、ここに「永住者」と明記しておいてくれればいいと思うのだが・・・
ピンクのIDカードの裏面
裏面は、周辺3か国労働者向けでない「非タイ国籍者IDカード」なら、カード素材が共通なので、どのカテゴリーでも全く同じだ。
裏面には、次のような注意事項が書いてある。
この注意事項の記載は、タイ人用の水色のIDカードにはない、
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- このカードは国民IDカード(バット・プラチャーチョン)ではない。
- 常時携帯し検査に備えること。
- カードに記載されている者は、外国人身分証明書を保持する場合 または文書による許可を得た場合を除き、カードを発給した地区の外に出てはならない。
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3の「カードを発給した地区の外に出てはならない」という規定は、永住外国人(=外国人身分証明書を保持)と非永住の外国人一般(=パスポートとビザを保持)には、問題にならない。
この規定は実質的に、無国籍者のみに対する制限となっている。
無国籍の「非タイ国籍者IDカード」保持者であれば、域外移動には郡役所で「域外旅行証」ใบอนุญาตออกนอกพื้นที่ を取得する必要がある。
Lacer Code は取扱いに注意!
IDカード裏面の左下には、数字ないし文字と数字の羅列がある。
これは、Lacer Code と呼ばれるものだ。
Lacer Code はタイ人用IDカードにもあるが、外国人・無国籍用の「非タイ国籍者IDカード」とは、ケタが異なる。
タイ人用は、AA0-0000000-00 のようになり、アルファベット2文字+数字1桁-数字7桁-数字2桁となる。
ピンクIDの方は、数字の桁は同じだが、頭にアルファベット2文字がない。
実は、Lacer CodeとID番号を合わせてシステムで検索すると、いろいろな個人情報が引き出せるそうだ。
そのため、IDカードのコピーを提出する際には表だけにして、裏は渡さないことが推奨されている。
特に滞在を許された非合法入国者は、白いIDカード
さらに、タイに非合法に入国したがその後の滞在を許されて内務省システムにも登録されているが、住民登録のいずれのカテゴリーにも合致しない人には、一桁目が0-から始まるID番号が付与される。
この場合、白いIDカードが発行される。
このカードは、「登録カテゴリーがない者のIDカード」บัตรประจำตัวบุคคลที่ไม่มีสถานะทางทะเบียน と呼ばれる。

この白いIDカードにも、ICチップはない。
0-にもいろいろなサブカテゴリーがある。
IDカード上に文言では表記されないが、数字の振り方でサブカテゴリーが分かるようになっている。
なお、こんな白いIDカードを持つ人はごく少数と思いきや、そうでもない。
2018年のタイ政府の統計では、白カード保持者の数は、約87,000人だ。
特にタイのミャンマー国境周辺には、多数の白カード保持者がいる。
白カード保持者には住居登録証(タビアンバーン)はなく、代わりに、「経歴登録書」(タビアン・プラワット ทะเบียนประวัติ)と呼ばれる書類を交付される。
このグループの人たちは、タイ入国の過程こそ法律の枠外であったが、その後のタイ滞在は許されているので、不法滞在者ではない。
但し、居住地・タイ国内移動・就労等に、いろいろな制限がある。
IDカードで無国籍者と混同される!
私が経験したことだが、バンコクへ向かおうとチェンマイ空港でチェックインする際に、身分証明書としてピンクの「非タイ国籍者IDカード」を提示したところ、「域外旅行証も見せて下さい」と言われてしまった。
無国籍者と混同されたわけだが、あいにく外国人身分証明書もパスポートも持って来ていなかった。
運転免許証も提示して、口頭で違う旨を説明して難を逃れた。
同行していたタイ人の義弟が、「顔を見れば日本人だとわかるだろうにな・・」と私の代わりにボヤいていた。