タイIDカードを持つと出来ること

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2021年1月
最終更新2021年10月

タイのIDカードを持つと出来ること

タイの永住者は、郡役所等で「住所登録証」(タビアンバーン)への登録が済むと、その登録を行った役所で手続きすることで、券面がピンク色の「非タイ国籍者用IDカード」を取得することが出来る。
発行主体はタイ内務省だ。

タイにはアメリカのグリーンカードのような「永住者専用のIDカード」は存在しないので、「非タイ国籍者用IDカード」は、永住者専用というわけではない。
このIDカードは、ノン・イミグラントビザで滞在の非永住外国人や無国籍者でも、住居登録証(タビアンバーン)に名前が登録されてタイのID番号が付与されれば、永住・非永住を問わず取得することが出来るからだ。

厳密に言うと、「タイ国民登録法」やタイ内務省中央登録局「非タイ国籍者IDカード発行規則」に従えば、外国人が「住居登録証」(タビアンバーン)に氏名が記載されると、タイの「非タイ国籍者IDカード」を「取得せねばならない」ことになっている。
つまり、「住居登録証」(タビアンバーン)に登録された外国人にとって、法規則上は、取得は任意ではなくて義務なのだ。
しかし、取得していないからと言って、罰せられたり、取得を強く促されるような現状にはない。
なので現状は、法規則上はともかく運用上は取得するかどうかは当人の任意だ。

IDカードがあるからといって特別に出来ることはあまりない・・・

IDカード1枚を示せば、パスポートを携帯せずとも、公的身分証明が出来る。
タイの日常生活でIDカードの提示が必要になる場面はかなり多く、どこかに入館や入場する際にも提示したり預けたりすることは多いので、手元に1枚あるならこれは便利だし心強い。

ただ、そういった単純な身分証明や身分証提示以外には、持っていてもあまりさしたることがない。

IDカードを持ったからといって、これまで出来なかった何かが、特に出来るようになったかというと、なかなか思いつかない。
IDカードで出来ることの多くは、なにもこれでなくとも、タイ運転免許証でも出来るからだ。

例えば、タイの郵便局では、EMSや書留を出す際には必ず、身分証の提示が求められる。
民間宅配便で荷物を送る際にもそうだ。
IDカードを出せば済むが、しかし、これも運転免許証でも可能だし、もちろんパスポートでも可能だ。

それであっても、根本の身分証明書であるパスポートを持ち出さなくても済むことが多くなった、というのは確かにある。

しかしそれは、運転免許証ででも大体は出来ていたことだ。

民間サービスの利用

民間のサービスでは例えば、PTTやBigCの会員登録システムは、13ケタのID番号だけしか対応してないので、パスポートでは登録できない。
これが、ID番号で登録出来るようになった、などと言うのはある。
これはこれで重宝してはいるが、正直、全然大したことではない。
それに、これはIDカードがあるから出来るようになったというより、ID番号が付与されたから、という方が正確だ。

また、タイ人用IDカードと違って、外国人用にはICチップが付いていない。
そのため、ICチップを使用するサービスは受けられない。
民間サービスだと、セブンイレブンのAll Member はこのタイプなので、外国人用のIDカードでは登録できない。

パスポートか、IDカード+住居登録証かを、選択できる

ひとつ言えるのは、さまざまな登録や証明を、パスポートをベースに行うか、IDカード+住居登録証(タビアンバーン)(+外国人身分証明書+居住証明書)で行うかを、いずれか「選択」できるようになった。

例えば、銀行口座や証券口座の開設・保険などは、パスポートをベースに行うことも、ID番号をベースにIDカード+住居登録証(+外国人身分証明書+居住証明書)で行うことも、どちらでも出来る。
これが選べるわけだ。

労働許可証の延長は、IDカード+住居登録証では出来ず、外国人身分証明書+居住証明書になる。

銀行だが、私は銀行口座の登録情報を、パスポート番号からID番号に変更した。
その後は、窓口での本人確認書類は、IDカードでOKとなった。
かなり手軽になったとは言える。

クレジットカードは、Amex、SCB、AEON の三社に尋ねたら、外国人はパスポートでしかカードを作れないそうだ。
なので、登録をパスポート番号からID番号に変更することも、出来ないという。

携帯はDTECを利用しているが、こちらも、外国人の契約はパスポートでしか受け付けていないので、登録をID番号に変更することは出来ないとのことだった。

IDカードのメリット

パスポートをベースにした時のデメリットだが、パスポート番号が変わったら銀行をはじめ各所に通知し直さなければならない。
10年20年とタイで生活を重ねていると、口座や契約先がだんだん積もるように増えて、全部でいくつ持っているかなど、数えなくては分からなくなって来る。
パスポート番号が変更になったからと言って、全部確認していちいち出向いて変更手続きを取るのは、気が遠くなるような作業だ。
まだ電話契約ぐらいだったら放置でもいいかも知れないが、金融・保険系はそういうわけにはいかない。

これが、IDカードを使ってID番号をベースにすれば、永住者なら一生変更はないので、そういった手間から解放されるというのはある。

とは言え、いずれもあまり大したことではない。たかだかそんなことかとも言える。
まあこれが実際だ。

IDカードの不便なところ

大事な情報が書かれていない・・・

デメリットだが、ピンクの「非タイ国籍者用IDカード」には、不思議なことに、次のような大事な項目の記載がない。

◆氏名がタイ文字表記だけで、アルファベットの併記がない。
◆国籍の表記がない。
◆永住者の場合、「永住者」というステイタスの表記がない。

これらに起因する不便は、いろいろある。

例えば、飛行機の予約はアルファベット名で行う。
チェックイン時にIDカードを提示しても、表記がタイ語だけなので、照合が難しい。
ホテルをアゴダ等のサイトで予約してチェックインする時も同様だ。
それ以外にも、外国人の氏名がタイ文字で書かれることは稀で、アルファベットで書かれる方が圧倒的に多い。
だったら運転免許証の方が、氏名がアルファベット表記なので証明や照合に便利だということになる。

IDカードを出したばかりに無国籍者と混同??

上で触れたように、永住者のIDカードには、「永住者」というステイタスは特に明記されていないし、国籍の表記もない。
ピンクのIDカードは従来から、無国籍少数民族の人たちが持つことが多い。保持者の実数が一番多いのは、恐らくこのグループの人たちだと思われる。
彼らの多くは、タイ国内の移動が完全に自由ではなく、居住地の郡または県内に限られている。
域外に出るのは可能だが、その都度、郡役所から「域外旅行証明書」の取得が必要だ。

一般タイ人の認識では、ピンクのIDカードとは、そういう移動制限がある「無国籍の山の人たちが持つもの」という印象があるため、飛行機のチェックインだので見せると「域外旅行証明書も出して下さい」「このカードだけでは他県に行ってはいけません」などと言われることがある。
カードを見せて「?」という顔をされ、「・・でも本当は日本人ですよね?」と聞かれたこともある。
私がもらったばかりのピンクIDカードを、タイ人の義理の妹が見てすぐに言ったのは、「山岳民族みたいですね!」だった。

これも、IDカードからだけでは、「永住者だという事実」も「国籍」もわからないのに起因している。
細かく言えば、永住者のID番号はひと桁目が8から始まるので、そういう番号のルールを知っている人が見れば永住者だと分かる、とは言える。
しかし、ごく普通の一般タイ人はそんなことなど知らない。
「ID番号が 8 から始まっているから永住者だね」などと分かるとしたら、この方面によっぽど詳しい人だけだ。

IDカードのはずなのに、1枚で身分を証しきれない・・・

こんなことで、本来1枚で身分を証明するはずのIDカードなのに、これ1枚だけでは身分を証し切れていない。

正直言って、これではIDとしての機能が全く不十分だ。

そんなときでも大体は、タイの運転免許証との2枚持ちで、組み合わせて使って、なんとかなっている。
いやむしろ、IDカードで特に登録した箇所(銀行等)を除けば、たとえIDカードがなくても運転免許証1枚でこと足りてしまうことの方が、多いような気がする。

特に、永住者になってから運転免許証を再発行したら、従来は免許証の氏名表記がアルファベットだけだったのが、アルファベットとタイ文字の併記になった。
これで、運転免許証の身分証明の効力がさらに増して、便利になった。

参 照:運転免許証の再発行

タイ人料金になるかは不明

よく言われる、IDカードを提示すればタイ人・外国人の二重料金がタイ人プライスになるかという話だが、私はそもそもそういうところにあまり行かないので、よくわからない。

例えばバンコクのワット・プラケオ(エメラルド寺院)の入場料など、外国人は500バーツもするのにタイ人は無料なので、タイ人扱いになればメリットあるような気はするが、どっちであろうと、私はそもそもワット・プラケオには行かない。

IDカードがあるんだから、ここに永住しているんだから、と交渉して、タイ人価格になることもあるのだろうが、個人的にはどうでもいい気がしている。

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