2020年8月
最終更新2022年7月
目次
ノンクォーター・イミグラントビザは再入国許可。 永住ビザじゃない!
あたかもタイの「永住ビザ」のように大きく誤解されることが多いのが、ノンクォーター・イミグラントビザ Non-Quota Immigrant Visa だ。
タイの永住権案内のような民間のサイトを見ると、「タイの永住権はノンクォーター・イミグラントビザ」だとか「タイの永住権にはイミグラントビザとノンクォーター・イミグラントビザがある」などと書いているケースが、散見される。
はっきり指摘して置く。
間違いだ。
以下、誤解が多いノンクォーター・イミグラントビザについて解説しよう。
なお、「イミグラントビザ」については、同ビザは現在、制度上残っているのみで、実際には発給されず申請も出来ない。この委細は、こちらにまとめた。
参 照:驚き!タイに永住「ビザ」はない?
ノンクォーター・イミグラントビザは再入国許可
永住者にはタイ出入国に際して、「再入国許可」(リエントリー・パーミット)が発給されない。
代わって発給されるのが、ノンクォーター・イミグラントビザだ。
永住権保持者がタイ国外に出国して再度戻るためだけに発給され、パスポートに押印される。
なので役割は全く、「永住者用の再入国許可」だ。
タイ出国前に取って置けば、永住権は出国しても失効しない。
逆に、ないままにタイを出国してしまうと、永住権はその時点で失効する。
だから「ビザ」とは言っても、他のビザとは全く意味合いが異なる。
取得も、タイ国内の入管で出国前にしかできず、国外のタイ大使館・総領事館では発給されない。
1年間と有効期間があるのも、シングルとマルチの2種類があるのも、再入国許可と同じだ。
但し、空港の再入国許可発給カウンターでは取得できない。
必ず、バンコク入管の永住権デスクか居所を管轄する地方入管のいずれかで、事前に取得して置かねばならない。
また、永住者がタイを出入国するために必要なので、出国予定がないなら取得は不要だ。
私が取ったノンクォーター・イミグラントビザ(マルチ)
タイ出入国には居住証明書の「裏書き」(Endorsement)も必要
但し、実際に永住者が出入国するには、パスポートのノンクォーター・イミグラントビザだけではダメで、永住権を証する冊子「居住証明書」(Certificate of Residence)の方にも、入管で事前に、1年間有効な「裏書き」(Endorsement)のスタンプを取得する必要がある。
私が取った「裏書き」Endorsement
永住者になると、タイ出入国はパスポートのみでは出来ない。
「パスポート」と「居住証明書」の「双方」を出入国審査で提示する。
タイの出入国スタンプは、この「双方に押印」される。
なので、「パスポートのノンクォーター・イミグラントビザ」と「居住証明書の裏書き」が、「対」になって、はじめて再入国の効力を得る。
この辺はややこしいので、別項で述べる。
ノンクォーター・イミグラントビザは黙っていてはもらえない
このように、ノンクォーター・イミグラントビザは永住権ではなく、実質的に「永住者用の再入国許可」だ。
なので永住権を取得したとしても、黙っていても最初からもらえるものではない。
事実、永住権の受領時(=「居住証明書」の受領)に、はじめからパスポートに押印されてなどいない。
必要になった永住者が必要な時に別途申請すると、発給される。
わたしが最初に取得したのは、永住権を得て2年以上経ってからだった。
その間は出国予定がなく、必要がなかったからだ。
繰り返しだが、ノンクォーター・イミグラントビザは「永住ビザ」ではない。
役割は永住者用の再入国許可なのだから、取得するかどうかは、本人の任意だ。
永住者でもタイから出国予定がないなら、取得する必要はない。
ノンクォーター・イミグラントビザがタイ国内で切れても、問題ない
ノンクォーター・イミグラントビザの有効期間は、居住証明書の「裏書き」の有効期限満了日まで。
「裏書き」は1年有効なので、「裏書き」と同日に取得したノンクォーター・イミグラントビザなら、1年有効だ。
なので、1年後には失効する。
(マルチの場合。シングルなら1年以内に使った時点で終わり)
切れたら、どうなるのだろうか?
とにかく実質は再入国許可なので、タイ国内にいる間に切れても、次に再入国する効力が失われただけだ。
切れても当然、タイ国内に居続ける限りはそのままで何の問題もないし、永住権自体の効力にも、何も影響しない。
出国するには再度取り直さねばならないが、次の出国予定が当面ないなら、切れたからと言ってすぐ取り直す必要はない。
だから、すぐ取り直したい人はそうすればよく、その必要はない人は何もしなくていい。
但し、タイ国外にいる間に期限が切れると永住権が失効する。
必ず期限内にタイに戻らねばならない。
バカな! 永住権を取ったのに、入管に毎年出頭や更新?
それから、ノンクォーター・イミグラントビザを毎年取り直しているタイ永住者には、「永住権は入管で年に1度更新」せねばならないとか、「永住者も年1度入管に出頭」しなければならない、という人もいる。
これは、正しくない。
永住者に毎年入管に出頭するような義務はないし、タイ永住権そのものには更新はない。無期限に有効だ。
こういうことを言う人は、1年有効のマルチのノンクォーター・イミグラントビザと、永住権を証する冊子「居住証明書」の「裏書き」Endorsementの、毎年の取り直しを指して言っている。
ノンクォーター・イミグラントビザ(マルチ)と「居住証明書」の「裏書き」の、「毎年の更新」とはなんだろうか?
これは、同ビザと「裏書き」の役割は、二つが「対」になって効力をもつ「永住者用の再入国許可」なので、再入国の効力を常に切れ目なく保持したい人が、1年経って切れた時点ですぐさま取り直すから生じる。
その結果として形の上で、毎年出頭になったというだけだ。
マルチのノンクォーター・イミグラントビザと「裏書き」を切れたらすぐさま取り直していれば、再入国の効力が常に維持されるので、突然の出国予定が入ってもすぐにいつでも出発できるメリットがある。
しかし、そうするのは義務ではない。
自分の意志だ。
ましてや、こういう「永住者用の再入国許可の単なる取り直し」が、「永住権の更新」なわけはない。
出国予定がないなら、ノンクォーター・イミグラントビザも「裏書き」も、切れてもすぐに取り直す必要はないし、タイ永住権は無期限に有効で更新はない。
だから永住者は、次の出国予定がなければ、入管には5年でも10年でも行く必要はない。
もちろん、入管に他の用が出来たというなら別だ。
但し、「投資」で永住権を取った人は少し違う
但し、「投資」のカテゴリーで永住権を取った人だけは、少し別な扱いがある。
「投資」の場合、永住権を受領した後も3年間は毎年1回、投資が維持されていることを入管に報告することとされている。この間は年1回の入管出頭が必要だ。
4年目以降の取り扱いは、明文化された規定が見つからず私には不明だ。
関心の向きは直接入管に確認して欲しい。