裏書きとノンクォーター・イミグラントビザの取得

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2022年5月

永住者のタイ出入国には、事前に二つのスタンプが必要!

タイ永住者になると、永住権を失効させずにタイを出入国するためには、出国前に入管であらかじめ二つのスタンプを取得しておく必要がある。

ノン・イミグラントビザの頃であれば、出入国には「再入国許可」Re-Entry Permit ひとつが必要だった。
しかし、永住者になるとこの「再入国許可」Re-Entry Permit がもう発給されない。

代わって永住者に必要になるのが、次の二つだ。

「裏書き」Endorsement
 (
「居住証明書」Certificate of Residence に押印される)
「ノンクォーター・イミグラントビザ」Non-quata Immigrant Visa
 (パスポートに押印される)

この二つのスタンプ、すなわち居住証明書の「裏書き」Endorsementと、パスポートの「ノンクォーター・イミグラントビザ」は、有効な双方が「対」になって、初めて再入国の効力が得られる。
片方だけでは、何の効力もなさない。

NQIV and Endorsement
わたしのパスポートの「ノンクォーター・イミグラントビザ」(左)と、居住証明書の「裏書」(右)。

永住者はパスポートだけではタイを出入国出来ない!

非永住の一般外国人とは大きく異なり、永住者はパスポートだけではタイを出入国できない。
空港や国境での出入国審査の際には、上記の二つのスタンプを事前取得した上で、「パスポート」のほかに永住権を証する「居住証明書」Certificate of Residence の提示も必要で、この2冊を一緒に審査官に提出せねばならない。
すると、タイの出入国スタンプは「この2冊双方それぞれに」押印される。

だから、永住者であれば当然に、出国時にうっかりとパスポートだけを持ってきて「居住証明書」の方を忘れてしまったような場合には、それでは出国することが出来ない。

(パスポートだけでどうしても出国したければ、その旨を意思表示すれば出来るそうだが、永住権は失効する)

ノンクォーター・イミグラントビザの役割は「永住者の再入国許可」

「裏書き」と「ノンクォーター・イミグラントビザ」の役割は上のように、二つが「対」になって効力を持つ「永住者用の再入国許可」だ。

しかしそれなのに、ノンクォーター・イミグラントビザはあたかも、タイの「永住ビザ」だと誤解されることが多い。
それは間違いだ。
この委細については、以下にまとめた。

参 照:ノンクォーター・イミグラントビザは永住ビザじゃない!

取得はバンコク入管の永住権デスク、または居住県を管轄の地方入管

「裏書き」と「ノンクォーター・イミグラントビザ」の取得先は、以下のいずれかだ。

バンコク入管の永住権デスク
自分の居住地を管轄する地方入管

バンコク入管はオールマイティー

バンコク入管(入管ディビジョン1)の永住権デスクは、永住者に対する管理業務ではオールマイティーだ。
「裏書き」と「ノンクォーター・イミグラントビザ」についても、永住者ならバンコク在住者・地方在住者を問わず、誰でもここで申請手続きができる。

地方入管は、管轄県に登録住所がある者のみ!

一方、地方入管は「裏書き」と「ノンクォーター・イミグラントビザ」については、その県内に登録住所がある永住者からしか申請を受け付けないので、注意が必要だ。
もし入管がない県であれば、指定された近隣県の最寄り入管だ。
登録住所がどこかは住居登録証(タビアンバーン)のほか、「居住証明書」や警察が永住者に発行する「外国人身分証明書」(要提示)にも書き込まれているので、入管側には一目瞭然だ。

このため、例えば陸路で隣国に出国するような場合、居所を出発する前には時間がないからと、国境県の地方入管で取得しようと思ったとしても、そういうことは出来ない。

別な言い方をすると、「裏書き」と「ノンクォーター・イミグラントビザ」は、バンコク入管の管内に居住する永住者は、バンコク入管でしか取得できない。
一方、地方在住者なら、自分の居所を管轄の地方入管とバンコク入管の、どちらでも取得できる。
しかし、バンコクでも居住県でもない第三県の地方入管では、取得は不可だ。

小規模な地方入管では発行しないところも

永住権デスクの担当者の話では、各県の地方入管は県によっては小規模で業務が限定されているところがあるそうで、そういうところでは発行できないそうだ。
ただそれがどこかは、そういう入管が小規模な県に住んでいる永住者にしか関係ないので、具体的な県名はわたしは聞いていない。
関心の方は自分で確認して欲しい。

注意! 空港の「再入国許可発給カウンター」では取得不可

スワンナプーム空港やチェンマイ空港をはじめ主要な国際空港には、「再入国許可」Re-Entry Permit の発給カウンターがある。
しかし、ここで発給するのはあくまで、ビザ保有者に対する「再入国許可」Re-Entry Permit だけだ。

永住者用の「裏書き」と「ノンクォーター・イミグラントビザ」は、ここでは申請も発給も出来ないので、注意が必要だ。
だから出国前には、必ず市中の入管で事前取得しておかなければならない。

永住者の中には、「裏書き」と「ノンクォーター・イミグラントビザ」を単に「リエントリー」などと称しているうちに違いが区別つかなくなって混同してしまい、その結果、空港でも取得できると漠然と思い込む人もいるようだ。

そうではないので、十分に注意が必要だ。

住所変更しないまま他県に住んでいると、出国したい時に少々ややこしい

永住者の中には、登録上の住所から転居して他県に住んでいるのに、正式な住所変更をしていない人もいるかも知れない。
転居した訳ではなくとも、住居登録証(タビアンバーン)へ登録する際の都合で、最初から現住所ではなくて、他県のタイ人配偶者の実家や親族宅などを登録住所にしている永住者もいるだろう。

この場合、出国が必要になった際には少しややこしくなる。
「裏書き」と「ノンクォーター・イミグラントビザ」の申請は、「居住証明書」や「外国人身分証明書」に正式記載された住所がある県の入管か、バンコクの入管のいずれかでしか出来ない。
そのため、住所変更しないままに他県に住んでいると、居住県の入管では申請出来ない。
住所登録した県の入管かバンコク入管まで、わざわざ遠出して出向かなければならなくなる。

もっとも、バンコク入管の永住権デスクなら登録住所を問わず誰でも手続き出来るので、登録住所は他県だが現住所はバンコクのような場合には、バンコク入管に行けば問題ない。

通常は、二つのスタンプを同時取得する

「裏書き」と「ノンクォーター・イミグラントビザ」は、スタンプとしてはそれぞれ別個だが、事実上「二つが対」になっている。
有効な双方が「対」になって、初めて再入国の効力が得られるからだ。
一方だけでは効力をなさない。

そのため、通常は双方を同時に申請し取得することになる。
入管側の扱いも、二つのスタンプをまとめて一つの申請として受け付ける。
申請書こそそれぞれ1枚ずつ書くが、ひとつを申請-受領したら改めてもう一つを申請し直すのではなくて、1回で両方を同時申請してよい。
「ノンクォーター・イミグラントビザ」の申請書には、手持ちの「裏書き」の番号や有効期限を記入する欄があるが、二つを同時に申請するなら、この欄は空欄のまま提出して問題ない。
受取も、二つが同時に手渡される。

なので実際の手続きは、別個な二つのスタンプをそれぞれ申請-受領するという二つの手続きをしているのに、あたかも「ひとつの手続き」という感覚だ。

ノンクォーター・イミグラントビザだけ再取得することも

しかし、場合によっては二つを同時取得ではなく、「ノンクォーター・イミグラントビザ」の方だけを再取得することもある。
「ノンクォーター・イミグラントビザ」のシングルを、1年以内に2回以上取得するような場合だ。
「ノンクォーター・イミグラントビザ」の方には、シングルとマルチの2種類がある。
(「裏書き」は1年マルチ相当の一種類のみ)
だから、シングルの「ノンクォーター・イミグラントビザ」を取得して使用した後、「裏書き」の有効期限内にまた出国予定が生じたら、同ビザを再取得することになる。
このような場合には、「ノンクォーター・イミグラントビザ」の方だけを、単独で再取得することになる。

当初はこの年の出国は1回だけだろうと思って、シングルのノンクォーター・イミグラントビザを取得して置いたのに、その後の出国が2回以上になってしまった、といったケースが当てはまる。

申請と受領

申請書類

申請書類は簡単だ。
申請書と写真の他には、以下の冊子の原本とコピーだけ。

「裏書き」の申請書
「ノンクォーター・イミグラントビザ」の申請書
◆「パスポート」 原本・全ページコピー1部
◆「居住証明書」 Certificate of Residence 原本・全ページコピー1部
◆「外国人身分証明書」 Certificate of Alien 原本・全ページコピー1部
写真4枚

写真を別にすれば、あとはいずれも手持ちの冊子なので、それをコピーすればいいだけ。
他所から書類を取り寄せて集める必要はない。

発給手数料

居住証明書の「裏書き」 マルチのみ 1,900バーツ
パスポートの「ノンクォーター・イミグラントビザ」 シングル  1,900バーツ
マルチ 3,800バーツ

例えば、「裏書き」と「ノンクォーター・イミグラントビザ」のマルチを同時取得するなら、手数料は1,900+3,800=5,700バーツとなる。
少々高い。

受 領

受領は原則、当日。
チェンマイ入管の場合は、バンコクと違ってすぐにとはいかず、数時間待つ。
午前に申請なら午後早くに受け取り。
ただ、午後遅くに申請に行くと受領は翌日になってしまう。
また、忙しい時には午前中に申請しても、受領は翌日になることがある。

有効期間

有効期間は、少々複雑だ。
まず、「裏書き」の有効期間は、発行日から1年間。
有効期間内であれば何度でも使える。実質マルチと言える。
一方、「ノンクォーター・イミグラントビザ」の有効期間は、「裏書きの有効期間まで」だ。

だから、二つを同時に取得したなら、有効期間はどちらも1年だ。

一方で、もし「ノンクォーター・イミグラントビザ」をシングルで取得して使った後に、「裏書き」の有効期間内にもう一度同ビザを取得すると、この有効期間は手持ちの「裏書き」の期限までとなる。

つまり、「ノンクォーター・イミグラントビザ」は、有効な「裏書き」に紐づいてその有効期間までで発行される。
有効期限については実質、「裏書き」が主で、「ノンクォーター・イミグラントビザ」が従のような関係にあるわけだ。

翌年の再取得

出国予定が当面ないなら、すぐ再取得しなくていい

「裏書き」は、丸1年後には失効する。
対になる「ノンクォーター・イミグラントビザ」も、「裏書き」の有効期限と同日に失効する。
(マルチの場合。シングルなら使った時点で終わり)

失効後にタイを出入国するには、事前に双方の再取得が必要になる。

但し、失効後にすぐに出国予定がないなら、急いで再取得する必要はない。
必要になった時点で、再取得すれば良いだけだ。
もし年単位でタイから出国しないというなら、その間の取得は何年でも不要だ。
あるいは、念のため再入国の効力を常に維持して置きたいのなら、切れたらすぐに取り直せばいい。
これをどうするかは、本人の都合次第だ。

なお、双方のスタンプとも、「延長」という概念はない。
失効後には、単に新しいスタンプを取り直すだけだ。
だから、手持ちスタンプの有効期限が近付いたら、切れる前に、義務的に入管に出向いて「延長」しなければならない、などということはない。

手持ちスタンプ期限満了前の再取得

場合によっては、手持ちの二つのスタンプの有効期限満了日以前から、満了日を超えて出国しなくてはならなくなるかも知れない。
例えば、手持ちのスタンプの期限は4月15日までだとする。
しかし、4月1日から1か月出国せねばならなくなったような場合だ。

こういう場合の扱いだが、入管に確認したところ、上の例なら出国日である4月1日以前にスタンプを取り直す。
すると、申請日から1年有効の新しいスタンプが発行されるとのことだ。
同時に、旧スタンプは無効になる。
なので、旧スタンプの残存日数は捨てた形になる。

私の申請事例(チェンマイ入管で)

雨でずぶ濡れになった上に、入管に出直し

以下は、私のチェンマイ入管での取得記だ。

わたしは2022年5月下旬の金曜に、出国のための「裏書き」と「ノンクォーター・イミグラントビザ」をチェンマイ入管へ申請に行った。翌週水曜から出国予定があったからだ。
出発直前の月火では他用もあって忙しいので、前週のうちに取得して置こうとした。

この日はあいにく、1日中ざんざん降りの雨。
自分で車を運転して入管へ行くが、チェンマイ入管の駐車場は狭くてまず停めることが出来ない。
入管前の2車線 × 2車線の道路を挟んだ向かいの民間施設の敷地が有料駐車場になっており、そっちに車を停める。
雨は強く、駐車場の中がもう川のようなありさまで、くるぶしまで水につかる。
入管前の幅広の道を渡ろうとするが、歩道から一段低くなった車道に降りたらかなり深くて、すねの中ほどまで水につかる。
同じように道を渡ろうとする人と一緒に団子になりながら、バックを胸に抱え、横から来る雨を傘で防ぎながらホウホウの体で道を渡り切って、チェンマイ入管に。

こんな大雨の日は入管もガラガラかと思いきや、そんなことはなく、いつも通り混んでいる。

総合受付で行列して、「裏書き」と「ノンクォーター・イミグラントビザ」だと告げると、書類チェックを受けたら順番整理券なしで「3番窓口」へ行けと言う。
チェンマイ入管の3番窓口は、新パスポートへのスタンプ移動などを、順番整理券不要でウォークインで直接受け付けている。
手っ取り早くて便利のこともあれば、人が混むとすぐ順番不明になってカオスにもなる。

その3番窓口で「裏書きだ」と告げると、なんと「今日は出来ないから、来週月曜に来てくれ」とのこと。
まだ朝10時過ぎ。
枠が一杯のハズもないので理由を聞くと、「担当者がコロナ濃厚接触者になってしまい休んでいる」(!)とのことだ。

大雨の中をとんだ無駄足になったが、どうしようもない・・・
窓口の女性職員が丁寧で、「裏書きを取る人はめったにいないんで。すみませんね。」と言ってくれたのが、せめてもの救い。

また同じルートを逆にたどって、濡れながらホウホウの体で駐車場へ。

とんだくたびれ儲けだった。

おまけに風邪気味になってしまい、翌日微熱が出るありさま。
もしやコロナと心配したが翌々日のATKでも陰性で、すぐに良くなった。

出直したら今度はすぐに発給

翌週月曜は、まず朝8時半過ぎにチェンマイ入管に電話して担当者と直接話し、今日は取り扱うかどうかを確認。
「今日は出来る」ということなので、予定していた所用をキャンセルして入管に向かう。

10時過ぎに直接3番窓口に行くと、6~7人が行列している。
3番窓口は順番整理券なしなので、ガラガラだとすぐだが、待つと立って行列していなければならない。
行列の習慣がない国民が多い時など、カオスだ。

この日は運よく、行列出来る国民ばかりで粛々と進み、5分もせずに順番が来た。
「裏書きだ」と告げるとすぐ受け付けられて、2冊の大きな紙の帳簿に、それぞれサインさせられる。
「裏書き」と「ノンクォーター・イミグラントビザ」の、それぞれの発給帳簿のようだ。
私の前に取得した人の日付を見たら、2週間前だった。
やはり、申請者はそう多くないようだ。

手数料5,700バーツを納めたら、「13時に受け取りに来てくれ」とのこと。
ここまで、カウンターでのやりとりの所要時間は7~8分ぐらいだった。
行列の時間と合わせても、15分未満だった。

一旦家に取って返す。

13時過ぎに再度行くと、また5~6人の行列だが、やはり5分もせずに順番が来る。
「裏書きの受け取り!」と言うと、すぐに奥から私の分を出して来た。
少々説明があって、一緒にスタンプの日付に誤りがないかを確認したら、受領は終わり。
カウンターでのやりとりの所要は、7~8分ぐらいだった。
行列の時間と合わせても、15分未満だった。

なお、「裏書き」発給のために作業している係員は、前週金曜の人を含め複数いた。
前週金曜にコロナでいなかったのはどうやら、発給決裁権がある職員だったことがわかった。

チェンマイ入管の発給決裁者は1人だけ!(?)

今回分かったことだが、チェンマイ入管は地方入管ではタイ最大規模だが、そのチェンマイでも「裏書き」と「ノンクォーター・イミグラントビザ」の発給決裁者がどうやら、ひとりしか配置されていない模様だ。
それなので、この担当者がいなければ、発給は出来ない。
なぜ、不在時には他の人に権限を委譲できないのか不思議だが、その理由は不明だ。

いかにもタイ式で属人的な話だ。
しかし、恐ろしい話でもある。
出国前日や当日に申請しようとして、担当者が休んでいるからと断られてしまったら、最悪だ。
バンコク入管ならば、こんなことは決してない。
地方在住の永住者であれば、こんなリスクには十分に留意せねばならないだろう。

得た教訓は、次だ。

「申請するなら事前に入管に電話して、自分が申請に行こうとする日には発給できるかどうかを尋ねる」
「申請には余裕を持った方がいい。出国予定日の前日のような、出発直前に取得しようとしてはならない」

 

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