住居登録証(タビアンバーン)とは何か?

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2020年12月
最終更新 2021年11月

住居登録証(タビアンバーン)House Registration とは何か?

タイの住居登録証(タビアンバーン)とは、住居建物登録された家を単位に、家屋番号を付与して一冊の冊子を発行し、そこに住まう者を住民として登録して冊子に記載するものだ。
タイ住民登録法に基づいて、タイ内務省が管理・発行する。
タイの住民登録の役割を果たしている。
日本の住民票と戸籍が一緒になったようなものと言えよう。

正式名称は「住居登録証の謄本」サムナオ・タビアンバーン

なお、住居登録証(タビアンバーン)として各家が保管している冊子は、正式には「住居登録の謄本」サムナオ・タビアンバーン สำเนาทะเบียนบ้าน と言う。
冊子の表紙に正式名称がそのようにはっきり書かれている。
「サムナオ」はタイ語で「謄本」「写し」「コピー」と言った意味だ。
だから、一見して登録証そのもののように見える立派な冊子だが、実はそれ自体が謄本だ。
では、原本に相当するものはどこにあるかというと、タイ内務省の住民管理システムに、データとして存在している。
一般にタビアンバーンと称している冊子は、そのような住民登録データからの謄本だというわけだ。

この事実は一般のタイ人でも大半が誤解していて、冊子の表紙にはっきり「住居登録の謄本」サムナオ・タビアンバーンと明記されているにもかかわらず、その冊子自体が謄本ではなくて「原本」だと思っていることがほとんどだ。

ただ、これにこだわるとややこしいのでタイ人の一般認識に合わせて、本サイトでは、この冊子を単に「住居登録証」(タビアンバーン)と呼ぶ。

家を単位にした住民登録

住居登録証の冊子は、家ごとに一冊が発行される。コンドミニアムなら、部屋ごとに発行される。
発行の前提として、当該の物件がすでに住居建物登記されて「家屋番号」を取得していなければならない。

住居建物登記されて付与されたひとつの家屋番号に対して、1冊の住居登録証が発行されるわけだ。

同一の「家」(コンドミニアム)に住まう者は、住居登録証の冊子に、「世帯主」(チャーオ・バーン เจ้าบ้าน)と「同居者」(プー・アーサイผู้อาศัย)の別で、各人の姓名・生年月日・国民ID番号・国籍・転入日・転出日などが記入される。

ここでの「家」とは、血族的・家族的な一族ではなく、あくまで「ひとつの家屋番号を付与された物理的な建物」だ。
家を新築して登記すると、家屋番号が付与され、住居登録証が一冊発行される。
この「建物としての家」を基礎に、同居する者が誰であれ登録対象となる。
そのため、同じ一冊の住居登録証に記載されるには、互いの血縁や婚姻関係は、あってもなくても関係ない。

タイ人ならば原則、自分がいずれかの住居登録証に登録されている。

自分の名前を登録できる住居登録証は、一冊のみ

住民登録の役割があるので、自分の名前を登録できる住居登録証は一冊のみ。
家を複数所有していると、住居登録証自体は家ごとに発行されるが、その場合でも自分の名前は一冊にしか登録できない。他の冊子は無記名となる。
複数に同時に登録しようとする行為は、違法だ。

移る場合には、冊子から名前を抹消し、別の冊子に追記することで、転出・転入となる。

家の「権利書」ではない!

なお、住居登録証の機能は住民登録であって、家屋の所有権者を示す機能はなく、家屋の権利書ではない。
これはタイ人でも誤解している人が多い。
「世帯主」は、タイ語で チャーオ・バーン เจ้าบ้าน と言う。
チャーオ・バーンは、一般的なタイ語では「家の持ち主」(家主)という意味だ。
しかし、ここがタイ人の誤解の元だが、住居登録証上の概念/行政用語としての チャーオ・バーンは、物件の世帯の筆頭者を指す。「所有権者」プー・ミー・カンマシットผู้มีกรรมสิทธิ์ を指すのではない。

2種類の住居登録証(タビアンバーン)

住居登録証(タビアンバーン)には、二つの形式がある。

紺色の「トーロー14」は、タイ人及び永住外国人

ひとつは、紺色の冊子だ。公文書コードで トーロー14 / ท.ร. 14 と呼ばれる。
タイ人がいろいろな手続きに持参しているのを、よく見かける。

永住権を得てから私の名を追記した冊子。

タイ住民登録法によれば、この冊子に登録されるのは、次の通りだ。

      1. タイ国籍者
      2. 外国人身分証明書を所持する外国人(=永住者)

上の2「外国人身分証明書を所持する外国人」とは、つまり「永住者」だ。
「外国人身分証明書」 Certificate of Alien が発行されるのは、永住者だけだからだ。
このように、外国人でも永住者になると、この紺色の冊子に名前が登録される。

永住外国人がこの紺色の冊子に登録されることは、事例が少ないためかタイ人の間でもあまり知られておらず、役所の職員や弁護士と言った人間でも、分かっていないことが多い。

黄色の「トーロー13」は、非永住の一時滞在外国人

もう一つが、黄色の冊子だ。公文書コードで トーロー13 / ท.ร.13 と呼ばれる。
取得者が少なく、なかなか目にすることがない。
一般タイ人では知らない人が多く、初めて見てよく驚かれる。

私が結婚ノン・イミグラントビザ時代の2015年に取った冊子。永住となり2020年に紺色の方に登録した際に、返納になった。わずか5年の保持だった。

この黄色の冊子に登録されるのは、

      1. タイ入国者法に基づき正規に入国した「一時滞在の外国人」
      2. タイ入国者法に基づかず非正規に入国した外国人・無国籍者で、一時滞在を許されている者。

永住権がなく、ノン・イミグラントビザを延長しながら滞在している外国人は、すべて「一時滞在の外国人」(=非永住者/Non-Immigrant)だ。
なので、この黄色の冊子になる。
タイ人がこの冊子に登録されることはない。

非永住の一時滞在外国人でこの黄色の冊子に登録していた人が、永住者になったらこちらは返却して、タイ人と同じ紺色のトーロー14の方に登録し直さなくてはならない。

「タビアンバーン・クラーン」は入る住居登録証が一時的にない人

上述の通りタイ人ならば原則、いずれかの住居登録証(タビアンバーン)に登録されている。
しかし、物理的な「家」を単位にした制度だということもあり、いろいろな理由で住居登録証の登録先がない状態になってしまうことがある。
家を手放した・取り壊した・引っ越した・その他諸々の理由で、前の住居登録証から抹消されたが次の登録先がすぐにはない場合だ。

そういう中間的な状況に置かれた人は、その状態が解消されて住居登録証に再度登録されるまでの間、「タビアンバーン・クラーン」ทะเบียนบ้านกลาง に登録される。

「タビアンバーン・クラーン」とは特にそういう名称の冊子がある訳ではなくて、住居登録証の登録先がない人を一時的に分類して置くための、内務省住民登録システム上の分類クラスだ。
住民登録システム上のデータとしてのみ登録される。

ひとつの住居家屋に住居登録証(タビアンバーン)一冊が原則だが・・・

前述のように、登記され住居家屋番号を取得した家に対しては原則、住居登録証(タビアンバーン)が一冊だけ発行されて、その家に居住する者の氏名が全員分記載される。
しかし、タイ人と非永住外国人が同居している場合や、外国人同士でも永住者と非永住者の同居だと、同じ冊子に全員の氏名を記載することができない。
そのためこの場合には、家屋番号が同一であっても、タイ人または永住外国人には紺色のトーロー14が、非永住外国人には黄色のトーロー13が、それぞれ別に発行される。

非永住外国人が後に永住権を取得すると、黄色のトーロー13は返納となり、紺色のトーロー14に改めて登録することになる。
すると、新しい永住者がタイ人ないし他の永住者と同居していれば、一冊のトーロー14に集約されて登録される。

住居登録証の中身

住居登録証(タビアンバーン)の中身を紹介しよう。
紺色も黄色も、中身は基本的に同じだ。

一つだけ違うのは、黄色の方にはページの最上部または最下部に、

「タイに法律外で居住する者 または 一時滞在する者」
บุคคลที่อาศัยอยู่ในราชอาณาจักรไทยโดยไม่ชอบด้วยกฎหมายหรือในลักษณะชั่วคราว

という一文がある。
この文言は、紺色の方にはない。

中身の違いはこれだけなので、ここでは黄色の方だけ紹介する。

クリックで拡大できる。
色は、表紙だけでなく中のページも黄色い。

トーロー13の、1ページ目。
トーロー13の、2ページ目。

この冊子の保持者が後日、永住者になると、もやは「一時滞在」ではないので、紺色の方に登録される際にこちら黄色の冊子は返納しなければならない。

住居登録証への登録は、一時滞在外国人には任意だが、永住者には義務

住居登録証(タビアンバーン)の制度は、「タイ住民登録法」が定めている。

住民登録法によれば、外国人の住居登録証への登録は、非永住の一時滞在外国人については、「登録できる」とされている。
これは制度上、非永住外国人は「登録も可能」だというだけで「義務ではない」のだ。
どうするかは本人の任意で、「あえて登録したい人だけ」が、登録すればいい。
なので、ノン・イミグラントビザの一時滞在外国人(非永住者)には、長く住んでいても実際に黄色の住居登録証 トーロー13を持っている人はほとんどいないが、なくても違法ではない。

私の場合は、結婚Non-Oビザの頃に、手間だったがあえて登録した。

一方で永住者は、住民登録法上、住居登録証(紺色のトーロー14)へ「登録しなければならない」とされている。
非永住者と違い、「永住者の登録は制度上の義務」なのだ。

なので私は、黄色と紺色の双方の住居登録証(タビアンバーン)への登録を経験するという、なかなか得難い経験をしている。

夫婦は併記されて、真の結婚???

タイ人と婚姻している場合、ノン・イミグラントビザの一時滞在外国人の立場で黄色のトーロー13 を作ると、たとえ配偶者名義の持ち家に同居していても、住居登録証(タビアンバーン)はそれぞれ別冊になる。
そのため夫婦で同じ家に住んでいても、タイ人配偶者は紺色のトーロー14、外国人本人は一時滞在外国人なので黄色のトーロー13を、それぞれ別々に所持することになる。

一方、外国人の方が一時滞在から永住になれば、タイ人配偶者の持つ紺色のトーロー14に、同居者として追記される。黄色のトーロー13は返納する。
そうなると、住居登録証は二人で1冊になるわけだ。

これでようやく、夫婦で同じ家に暮らしているのに分かれ分かれだったのが、1冊に一緒に併記されることになる。
これでようやく、真の結婚だろうか???

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