2022年1月
最終更新 2022年7月
目次
タイ永住権の発給時期は決まっていない
タイ永住権には、申請受理ないし審査が終了してから、「いつまでに発給する」という日数的は規定はない。
特定の「発給時期」の定めもない。
規定からも実務運用上からも、永住権がいつ発給されるか、発給までにどのぐらいの期間を要するのかは、事前にはわからない。
だから、タイ永住権を申請するならまずは上をよく理解して、そのつもりで構えよう。
そうでないと、いつ結果が出るかもわからないものをただひたすら待つというのは、精神衛生上も良くない。
それでも、前例からおおよその予想をすることは出来る。
現在のプラユット政権下では発給が早く、申請締め切りから約1年半前後で毎年、発給に至っている。
ただこれは、制度上そうなっているからではなく、結果的に今のところそうなっている、というだけだ。
今後ともずっとそうだということは意味しない。
それから、タイ永住権発給の最終決裁者は首相だ。
たとえ内部審査に合格していても首相決裁がなされなければ発給されないので、発給時期を決定的に左右するのは、首相がいつ決裁するかだ。
タイ永住権の審査期間
タイ永住権の審査期間は、毎年の永住権募集公示に明記されている。
毎年その年の分についてのみを定める形ではあるが、実際には変化はなく、毎年同じだ。
2019年の公示に従えば、次の通りだ。
申請書類の関係機関への照会とその回答期間 申請者及び関係者への面接調書作成 |
90日 |
申請者のタイ語能力(聞く-話す)及び人格の審査 (=「タイ語面接」) |
90日 |
結果の取りまとめと、入管審査委員会への提出 | 120日 |
入管審査委員会の審査を通過したら、内務大臣と首相の決裁に上げる。
内相と首相の決裁がなされたら、入管は30日以内に申請者に対して永住権発給を通知する。
公示上の審査期間は10月末までの300日間
永住権の公示上の審査段階は上の表にある3段階。審査期間は 90日+90日+120日=300日間だ。
毎年の永住権申請締め切りは12月末なので、そこから300日間とは、翌年10月末だ。
もちろん実際には、状況次第で前後する。
上の表は公示文書からそのまま引用したが、日数がいま一つ分かりにくい。
意味するのは、例えば2段階目の「タイ語面接」ならば、その前段階の「関係機関照会」と「調書作成」に90日間が設定されているので、それが過ぎた後の「次の90日間」のうちに面接が実施される、ということだ。
それなので、申請締め切りから数えれば、3か月(90日)以降6か月を超えない間に「タイ語面接」が実施される、ということなる。
この審査日程の進行はルーティン的な事務作業で、運用上も毎年、おおよそこのペースで進んでいるようだ。
もちろん、タイの行政手続きなので、状況次第である程度前後するはずだ。
また、取りまとめた結果を入管審査委員会へ提出して以降の、内務大臣と首相の決裁には、日程の規定がない。
入管審査委員会は承認の場
事務方が取りまとめた審査結果は、「入管審査委員会」に諮られ通過することで、承認される。
形式的には、これが審査の最終段階だ。
が、入管審査委員会というのは、ひとりひとりの個別申請をいちいち審査する場ではなく、事務方が精査し判定して取りまとめたその年の審査結果(合格内定者リスト)を報告し承認する場だ。
実質的な審査は、入管審査委員会に提出される前に、もう事務方が終えている。
真に実質的審査と言えるのは「タイ語面接」直後まで
わたしが入管担当者から聞いた話を総合すれば、永住権審査で真に実質的審査と言えるのは「タイ語面接」の直後までのようだ。
面接結果と書類判定結果を合わせた合否は、面接終了から1~2週間ぐらいで判明するという。
なので、事実上の審査プロセスはタイ語面接の約1~2週間後ぐらいで終了し、この段階ですでに合格内定者が確定している。
その後のプロセスはもう審査ではなくて、ほぼもっぱら、合格内定者に対する永住権の発給承認を得るための行政的手順と言える。
またこのように、実質的な審査結果はタイ語面接の1~2週間後ぐらいに判明しているため、入管担当者と良好な関係を作って置けば、その頃に担当者に直接尋ねれば、自分の合否を教えてもらえることが多いようだ。
私の場合も、この時期に問い合わせれば結果を教えてやる、と言われていたが、審査は問題ないと安心し切っていたため、尋ねもしなかった。
永住権がいつ発給されるかは、わからない!
タイ永住権の審査には、300日の審査期間が定めらていることは先に述べた。
しかし繰り返しだが、タイ永住権には、申請受理ないし審査が終了してから「いつまでに発給する」という、発給までの日数的な規定はない。
審査結果の「入管審査委員会への提出」までは上の通り、300日の日数規定がある。
審査に通ったら発給には内務大臣と首相の決裁が必要だが、しかし、内相決裁・首相決裁には日数規定がないのだ。
いつ決裁するかは、もっぱら大臣と首相に任されている。
このようなことから、毎年の決裁がいつなされるのかは、誰にもわからないので、いつ発給されるかも前もってはわからない。
ただ、内相と首相の決裁がなされたならば、入管は30日以内に申請者に対して永住権発給を通知することになっている。実際の通知はもっと遅くなることもあるが、いずれにせよ決裁さえされれば、すぐに発給となる。
整理すると・・・
整理すると、タイ永住権申請の受理後、「審査」「承認」「決裁」「発給」と進むうち、
◆「審査」には、「申請締め切りから300日間」という日数規定がある。この作業は例年ルーティンで進む。
◆審査結果は「入管審査委員会」が「承認」する。委員会の開催には日数規定がないが、ほぼ申請締め切り(12月末)から1年以内(翌年10~11月頃)に開催されている。この作業も例年ルーティンで進む。
◆しかし、内相と首相の「決裁」には、日数規定がない。運用上もいつ決裁されるか事前には分からない。
◆決裁後の「発給」には、「30日以内に申請者に発給を通知」という日数規定があり、実際にもすぐ発給される。
だから、「決裁」がいつなされるかが、ブラックボックスだ。これが実際の発給時期を大きく左右する。
永住権の最終決裁者は首相!
そしてこのように、タイ永住権の最終決裁者は、首相だ。
首相が最終決裁しなければ、永住権は発給されない。
そのため、永住権が毎年いつ発給されるかは、首相がいつ決裁するかに決定的に左右される。
審査プロセスはルーティン化している
入管担当者から聞いたところでは、毎年の入管審査委員会を通過させるまでの審査プロセスは事務的にかなりルーティン化しているらしい。
申請締め切り翌年の11~12月迄にはすべての処理を終えて、早ければ11~12月中、遅くても翌1~2月には内務大臣決裁・首相決裁に上げられるように進めて行くそうだ。
これは例年、このペースで進むそうである。
実務上このペースで進めなければ、次年度分の処理が始まってしまい作業が間に合わなくなってしまうそうだ。
問題は「決裁」
問題はそれを決裁に上げた後だそうで、大臣決裁・首相決裁に上げてしまった後のプロセスには入管の事務当局は関与できず、特に首相決裁がいつなされるかは、もっぱら首相次第だそうだ。
いつになるかは、誰にもわからない。
もしかしたら1~3か月後かも知れないし、1年後だったり、さらにもっと後かも知れない。
前例からおよその予想は出来る
ただそうとは言え、前例の積み重ねを見ることで、おおよその予想をすることは出来る。
プラユット現首相ならば、永住権申請締め切り(12月末)から約1年半前後で発給、というのがこれまでの毎年の実績だ。
だから、政治状況や社会状況に大きな変動がないなら、次年もきっとこのぐらいであろうという予測が立つことになる。
さらには、もしも政権が変わってしまったら、特に初回については予想がつかないが、それでも深刻な政治混乱がないなら3年以上はまずないだろう、などと予測することになろう。
赤と黄色の政治混乱期には永住権発給なし!
入管永住権デスクの担当者の話では、かつて永住権発給を申請から5年前後も待った人がいたのは、事実だそうだ。
理由だが、かつてタイの政治が赤と黄色に分断されて大混乱していた時期の何人もの首相は、誰も永住権の最終決裁を行わなかったそうだ。首相決裁がないのだから当然、発給もない。
そのため、この時期に申請していた人は、入管の内部手続き上は審査を通過しているのに、長い人では5~6年も待たされることになってしまったという。
但し、これほど長期で待たされたのは、上のような特殊な政治状況が理由であって、通常であればそんなことはないそうだ。
追 記(2022年7月)
本サイトをご覧下ったタイ永住権保持者の方から、「2012年に永住権を受領した」というお知らせを頂いた。
2012年と言えば、インラック政権下(2011年8月~2014年5月)だ。
ここから、政治混乱期と言われるインラック政権下でも初期の比較的安定していた時期には、永住権発給(首相決裁)があった事実が見て取れる。
プラユット政権下で発給再開
2014年にプラユット現首相がクーデターで政権奪取してからは、溜まっていた永住権決裁書を一気に処理したため、滞留していた人たちが一斉に永住権を得たそうだ。
ただ、長く待つうちにあきらめて母国に帰ってしまったり、入管から連絡がつかなくなってしまった人も少なくなかったという。
その後は現在まで毎年、円滑に首相決裁がなされており、申請締め切りから約1年半前後のペースで発給に至っているそうだ。
政治が安定すると永住権発給も安定するようだ
プラユット現首相下での、約1年半前後という決裁ペースはかなり早い。
入管担当者も「今の首相は早い」と言っていた。
赤と黄色の政争以前の政治安定期でも、2年前後を要することが多かったそうだ。
但し、このような現在の早い発給ペースは、制度に裏打ちされたものではない。
現首相がこのペースで決裁するからであって、首相個人への属人性によるところが大きい。
クーデターからの軍政を引き継ぐ現政権は、批判はあるものの、これまでのところよく安定している。
ここから言えそうなのは、今後もし不安定な政権に変わったり、さらにはタイ政治が再度大きな混乱に直面したりすると、永住権の安定的発給に大きく影響する可能性が高いということだ。
永住権を申請するならきっと、政治が安定している間がいいのだろう。
永住権の発給は特段に公示されない
毎年の永住権申請の受付開始は、公示がなされるので、誰でも簡単に知ることが出来る。
一方、永住権の発給決定は、特に公示はない。
審査に合格した本人に対して、直接通知されるのみだ。
そのため、毎年の永住権発給状況は、その年の当事者以外には見えにくい。
知りたい場合には、当事者に直接聞くか、バンコク入管の永住権デスクに問い合わせれば教えてくれる。
ん? 永住権の決裁が首相のはずがない??
こういう疑念を投げかける人もいるようだ。
まあ確かに、こういう正確な情報を載せている日本語サイトはここぐらいのものだが、しかし、他では読んだことがないからという理由で、信じない人は信じないのだろう。
そういう心情も何となくわからぬでもない。
念のために記しておくと、最終決裁者が首相であり首相決裁がなければ発給されないことは、入管永住権デスクで何度も確認している。
また、永住権発給を受ける当事者には、永住権の受領手続き時に入管から、居住地を管轄する警察署で「外国人身分証明書」Certificate of Alien を申請するためのレターが手渡されるのだが、首相決裁の日付は、このレターの中にはっきりと書かれている。(私のケースは2020年3月5日)
このレターの全文は、一番下にあるリンク先のページに挙げてある。
「決裁は首相じゃなくて内務大臣だ」と思っている人もいるようだ。
これは細かく言うと、まず内相の決裁を経てから、首相の最終決裁となる。
「審査」→「入管審査委員会の承認」→「内相決裁」→「首相の最終決裁」
こういう流れだ。
それでも信じ難ければ、どうぞバンコク入管の永住権デスクに、ご自分で直接尋ねてみて下さい。
ここに記してあるのとそっくり同じ回答が得られますよ。
わたしの永住権審査と発給までの流れの委細
わたしは2018年12月にタイ永住権を申請したが、発給の内相決裁は2020年2月18日に、首相決裁は2020年3月5日になされ、4月22日に発給が正式決定された。5月上旬に入管から発給決定の通知があった。
わたしの永住権審査と発給までの流れの委細は、次にまとめたので、合わせて参照頂きたい。