無犯罪証明書の取得と翻訳

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2020年9月

無犯罪証明書とは何か?

「無犯罪証明書」とか「警察証明」と呼ばれる書類は、正式には「犯罪履歴証明書」Certificate of Criminal Record と言う。
日本では警察庁が発行し、海外の公的機関に提出が必要になった時に理由を記して申請すると、宛先がはじめから明記されて、1事案に1通のみ作成される。
相応の発給理由があると認められなければ、申請が受理されない。
なので、特に目的はないがとりあえずもらっておくようなことは出来ない。

めったに目にすることがないと思うので、紹介しよう。
こんな書類だ。

私がタイ永住権申請のために取得した犯罪経歴証明書。宛先は「タイ関係機関御中」となっている。

中身は、日本語・英語・フランス語・スペイン語・ドイツ語の5か国語で書かれている。
氏名の他に、パスポート番号が明記される。

無犯罪証明書の申請はタイでも日本でも出来る

申請先は二つで、ひとつは、タイ国内の日本大使館/総領事館。
もうひとつは、日本国内で最終住民登録があった都道府県の警察本部だ。
まだ日本に住民票を残していれば、その住所の都道府県警察本部になる。
申請時に指紋を取るので、必ず本人申請となる。
なので、日本国内で取るなら、自分が日本にいなければならない。

手数料は、日本大使館/総領事館では、無料だ。
日本国内だと、なぜか都道府県によって異なる。
例えば、東京都や大阪府は無料だが、愛知県は500円、福岡県は400円だ。

受領は、日本大使館/総領事館ならば2か月未満。
国内だと県によって異なり1~2週間らしい。
この辺のことは、各県警本部のサイトで確認できる。

国内で申請したら受領も国内だ。受領だけを大使館/総領事館にすることは出来ない。
一方、国外で申請した場合には、日本大使館/総領事館で受領するほか、希望すれば、東京の外務本省証明班窓口で受領することも出来る。

私の場合にはチェンマイ日本総領事館で申請して、約ひと月半で受領となった。
10年ぐらい前に、別件で日本のある県で申請した際には、1週間だった。

タイで取った方が楽

日本国内で取ろうとすると、提出書類が増える。
パスポートはもちろん戸籍の附票だとか海外住所の証明のほか、「取得の必要性を示す書類」も提示しなければならない。
その原文がタイ語だったりするとさらにややこしいことになる。
いろいろな確認の質問にも答えなくてはならない。

これが日本大使館/総領事館ならば、パスポートと申請書を1枚出せばいいだけ。
なので、タイで申請した方がずっと楽と言える。

指紋採取が必要。日本大使館/総領事館には事前に日時予約を

日本大使館/総領事館での無犯罪証明書の申請には、両手全指の指紋採取をするため、事前の日時予約が必要だ。
実際に申請することになったら、いきなり行かずに事前に電話で確認する必要がある。
いきなり行ってしまうと、その日は申請書の受理だけになり、指紋採取は後日の出直しになってしまう。

認証と翻訳

永住権申請でタイ入管に提出する外国発行文書はすべて、大使館/総領事館の領事認証と、タイ外務省領事部のタイ語翻訳認証が必要だ。
無犯罪証明書も、この双方の認証を取得しなければならない。

手 順

認証と翻訳の手順だが、タイ外務省領事部は、外国文書と翻訳文のみを持ち込んでも、認証してくれない。
まず、その外国文書そのものに対して、発行した国の大使館/総領事館による領事認証が必要だ。
その上で、元々の外国文書と大使館/総領事館の認証文の、双方に対してタイ語訳文を作成し、タイ外務省領事部の認証課に提出して、翻訳認証を取得する。

無犯罪証明書の場合の手順は、こうなる。

無犯罪証明書を受領

日本大使館/総領事館で無犯罪証明書に領事認証「印章証明」を申請し、取得

無犯罪証明書と印章証明の、タイ語翻訳文をそれぞれ作成

タイ外務省領事部認証課に、認証済み無犯罪証明書・印章証明・翻訳文を提出し、翻訳認証を取得

無犯罪証明書の開封は・・・

留意点だが、無犯罪証明書は、宛先を明記した開封無効の封筒に入って交付される。
宛先はあなたではなく、提出先のタイの公的機関だ。

無犯罪証明書の封筒

当然ながら、領事認証を受けるには開封が必要だ。
しかし、これをそのまま、宛先ではない日本大使館/総領事館の窓口に認証に出そうとしても、開封してくれない。
本人が日本大使館/総領事館で封筒を受領して、そこですぐさま自分で開封して認証を申請しようとするのも、ダメだ。
名目上、「宛先(入管)に一旦提出してあちらが開封した」ということにならなければならないという。

なので私の時には、総領事館の窓口で一度受け取って立ち去り、時間をおいてから、「入管が開封して領事認証を取れとのことだった」として、認証を申請した。

もっともこれは、その時の窓口の担当者の判断にもよると思う。

日本大使館/総領事館で文書の領事認証-印章証明の実例-

日本大使館/総領事館での文書の領事認証と言っても、概念としては分かっても、実際にどういう形で具現するのか、なかなかピンとこないと思う。

「印章証明」の具体例を示そう。

日本総領事館の印章証明。タイ外務省の翻訳認証がなされた後の状態。

無犯罪証明書に対して、日本大使館/総領事館の領事認証として「印章証明」を取得すると、上のようなA4の文書が1枚発行され、無犯罪証明書と分かち難く綴じられる。
この文書が、印章証明だ。

このように印章証明は、A41枚紙として発行され、認証の対象書類と分かち難く綴じられる。
無犯罪証明書はこうして綴じられたことで、大使館/総領事館によって「認証された」わけだ。

なお、写真左下のシールはタイ外務省のもので、日本総領事館がこの認証文を発給した後に、タイ外務省の翻訳認証が済んだ時点で貼付されたものだ。

印章証明の手数料は円で決まっているのでレートによって変動するが、私の時には1,380バーツだった。
少々高い。

タイ外務省認証課での翻訳認証

タイ外務省領事部認証課の、タイ国内の出先は3カ所

タイ外務省領事部の認証課は、翻訳認証をはじめ各種の「文書の領事認証」(Notarization)を行う。
バンコクではラックシー区の外務省領事部と、市内の領事部サービスセンター。
地方ではチェンマイ、ウボンラーチャターニー、ソンクラーの3カ所に、パスポート事務所に併設されて認証課の窓口がある。
認証課は地方にはこの3カ所しかない(2020年現在)ので、注意が必要だ。

チェンマイの認証課は、いつ行っても空いている。

そのほか、現在は認証課への郵送による認証サービスも行われている。

上の詳しい所在地やタイ外務省領事部認証課のサービス全般については、外務省領事部のこのサイトを参照(タイ語)。

翻訳認証 -翻訳は誰が行ってもいい-

翻訳認証の大前提だが、タイ外務省領事部の認証課は、ここが翻訳をやってくれるのではない。
翻訳文は申請者が作成する。認証課はそれに対する認証を行う。
なので、事前に翻訳文を作成しておかなければならない。

認証課に提出する翻訳文は、誰が作成してもいい。
文書末に、翻訳者の名前とサインを入れる。
そして、翻訳者のタイIDカードやパスポートのコピーを添える。
翻訳者の職業や肩書などは全く関係なく、そういう事項の記入も不要だ。

だから、自分でやってもいい。
専門業者や肩書ある専門家でなければダメだと思っている人も多いが、そうではなく、「誰がやってもいい」「だから業者がやってもいい」というのが、正しい。

私は仕事柄、永住権申請に限らず、何年かに1回はなにがしかの翻訳認証を取る。
人の書類ではなく、自分の書類だ。

そのタイ語翻訳は、いつも自分でやっている。

特有の文書の型や用語づかいがあり、ダメだと鉛筆で訂正が書き込まれて差し戻される。
1回で通らなければ訂正して、再提出する。
慣れてくれば1回で通るし、あっても軽微な修正なので、パソコンとモバイルプリンタを持ち込んで、その場で訂正して再提出してしまえば早い。
訳語で見解が分かれると、交渉して呑ませることもあれば、こちらが呑まされることもある。

バンコクの領事部認証課だと、門前翻訳会社が軒を並べている。
永住権を自力で申請する人でも大体は、自分で翻訳まではしないだろうから、こういう業者を使うのが手っ取り早い。
チェンマイだと、業者は市中にはあるようだが、門前や近辺には全くない。

翻訳文は、無犯罪証明書と印章証明にそれぞれ作る

実際に領事部認証課に提出するタイ語翻訳文だが、この段階では日本側原文書が「無犯罪証明書」と「印章証明」の2文書になっているので、翻訳文も2文書分が必要だ。それぞれの翻訳文をA4一枚ずつ作成して提出する。
認証手数料も、2文書分が要る。
無犯罪証明書の方の翻訳だけでは完結しないので、印章証明の方も忘れないよう、注意を要する。

翻訳認証に要する日数と手数料

翻訳認証サービスには、「通常」と「エキスプレス」がある。
チェンマイの場合、「通常」だと3営業日目に受領。「エキスプレス」だと当日午後の受領となる。
手数料は、通常が200バーツ/文書、エキスプレスが400バーツ/文書だ。

翻訳認証済みを証するシール

タイ外務省領事部の認証課で認証された翻訳文は、原文書と分かち難く綴じられ、左下の隅にこのようなシールが貼られる。

一枚の原本が4ページに!

無犯罪証明書の原本は1ページだったが、一連の認証と翻訳を重ねると、最終的に、4ページになる。

無犯罪証明書の原本
日本大使館/総領事館の印章証明
無犯罪証明書のタイ語翻訳認証
印章証明のタイ語翻訳認証

これら全部が分かち難く綴じられて、ひと綴りの書類になって戻って来る。

提出期限は発行から3か月以内

無犯罪証明書自体の有効期限は、特に明示されていない。

しかし、タイ入管が定める受理要件は、「発行から3か月以内」だ。

なので、永住権の受付が始まる時期、自分が本申請をしようとする時期、認証と翻訳にかかる時間をよく勘案して、無犯罪証明書を適切なタイミングで申請する必要がある。

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